第13話

いつも晩飯。

「花子さんって、『トイレの花子さん』要素少なくありません? マサムネさんもそう思いますよね?」

「へ? 急に何言い出すのよ?」

「いや、花子さんって普段トイレに居ないじゃないですか」

「私がトイレから出てこなかったらマサムネ達のご飯は抜きになるわよ?」

「トイレでカレー食べたりトイレで流しそうめんしたりしないんですか?」

「しないわよ、バカじゃないの?」

「『トイレの花子さん』って言うより『専業主婦の花子さん』ですよね」

「そしたらマサムネの専業主婦になるからよろしくね」

「それはマサムネさんの母である私が許しませんよ」


「…ねえ、そのマサムネって呼ぶの止めてもらえない?」

「「え!? ダメなの?」」

首を傾げる花子さんと加藤さん。

「何で大丈夫だと思った!? マサムネって昨日花子さんが俺の息子に着けたアダ名だよね!?」

「しょうがないわね、好きな妖刀を選ばせてあげるから選んでよ。鬼丸国綱、童子切安綱、にっかり青江、エクスカリバー、さぁどれがいい?」

「どれも嫌だわ! それに、『にっかり青江』ってなんだよ」

「マサムネさん、『にっかり青江』は不気味に笑う若い女の怪異を退治した青江派の名刀です」

「不気味に笑う口裂け女を退治したんだからピッタリじゃない?」

「べ…別に退治されてませんから!」

「ならもう一度見てみる? マサムネのマサムネを」

「ちょっ! えっ!?それは心の準備が…」

「勝手に俺の息子のお披露目会を始めようとするなよ」

「別に減るもんじゃないじゃない」

「減ったら困るわ!」

「ちなみに何で花子さんはマサムネって命名したんですか?」

「正宗って短刀も有名なの。国宝にもなってるわ」

「あぁ~…」

「『あぁ』じゃねぇよ! そんなん小さくねぇよ! 平均サイズは越えてるから!」

「平均サイズとかあるんですね」

「ネットとかで調べれば簡単に出てくるよ」

「ふ~ん、ってことは調べたことがあるの?」

「…いや、友達から聞いた…」

「けど、平均よりあるって…自分の長さは測ってますよね? まさか…仕事で使っている定規で!?」

「そんな定規を仕事中に使わねぇよ!」

「じゃあどの定規よ?」

「中学の頃だから覚えてねぇよ!」

「中学のときにそんなことしてたんですね」

「お前等だってバストサイズとか測るだろ」

「そりゃあ測らないと下着買えないもの」

自分の胸をみた後、花子さんの胸をガン見する加藤さん。

「そ~言えばネットに書いて合ったんですけど、胸が大きいと寿命が短くなるんですって、花子さんも気をつけて下さいね」

「ニヤニヤしながら言ってる所悪いけど、既に死んでる私に、寿命でマウントとっても意味ないわよ?」

「…」

「…」

「…世の中って、不平等ですね…。はぁ、飲まないとやってられませんよ」

「あれ? 酒ってまだ残ってたっけ? もう全部のんだじゃない?」

「え!? 残ってないんですか?」

「えっと、料理酒と除菌用アルコールならあるわよ?」

「誰か優しい人が買って来てくれないかなぁ…じぃーー」

「分かりやすく俺を見るんじゃねぇよ」

「ついでに醤油とみりんと砂糖もお願いするわ」

「あれ? 俺が買いに行くこと確定してるの?」

「だって私はここのトイレから離れられないし」

「私はこの時間出歩いて職質されたときに提示できる身分証がないので」

「この時間に警官ってパトロールしてるの?」

「えーと…最近夜にナイスの様な物で切付けて来る不審者が出たらしくて…」

「それお前のせいじゃん!」

「自業自得ね」

「しょーがないじゃないですか! そーゆーキャラ設定にしたのこの家ですからね!」

「わかったって、大体それは死んだ婆さんに言ってくれよ」

「盆に帰って来たらバチクソ文句言ってやりますよ」

「はいはい、わかったわかった。じゃあ酒買って来るから。酒ならなんでも良いの?」

「私ストロングのレモン500mlを3本お願いします」

「私は梅酒900ml、紙パックのやつね」

「つまみはどーする?」

「簡単なので良ければ作っておくわ」


まだ近くのスーパーが開いてる時間だったので歩いて行くことに。

スーパーに着くと既に『蛍の光』が流れていた。

後少しで閉店の時間だ。

「ヤバっ急がなきゃ、加藤さんがストロングのレモンで、花子さんが梅酒の紙パック…1.5Lしかないけどコレでいいか」

ギリギリで買い物完了。


「あ! 調味料頼まれてたよな、忘れてた。醤油となんだっけ? しゃーない、電話して聞くか」

スーパーは閉まってるからコンビニまで遠回りしないとダメか。


「…あれ? 圏外だ」


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