第2話web作家はデスゲームに挑む
私の名前は
今日は推しの声優の写真集を買いに来たのだが、階段からまっ逆さまに落ちて死んでしまった。
あの高さから落ちたら確実に死んでるよね。
あと、趣味でweb小説を書いています。
目の前にいる黒髪のかわいい女性は私が書いたweb小説のキャラクターである神宮寺那由多であった。
「死神からの伝言、生き返るためには悪魔が用意したデスゲームを攻略して、囚われた三人の魂を解放することということよ」
私の手を力強く握り、神宮寺那由多は言う。
キッと南海なんば駅の大階段の最上段にいる人物をにらむ。
私もそいつを見るが、遠すぎて、ぼやけていてその姿ははっきりと視認できない。
「あいつがその悪魔ってわけ?」
私は那由多にきく。
「たぶんね、まあ、あそこにいかなければ解らないけど」
那由多は答える。
とりあえず、あの人物めがけてこの大階段を登りきらなければいけない。
段数はどれくらいだろうか?
目測ではあるが、百段はありそうだ。
ちょうど真ん中に巨大な踊り場がある。
階段をひとつ登るごとにあの老人のような怪物があらわれるのか?
単純計算で百体近くの怪物と戦わなければいけないのか?
いやいや、そいつは無理ゲーだよ。
私、ただのオタクの会社員だよ。地獄のようなゴールデンウィークが終わり、やっとオタロード巡りができると思ったらこの仕打ち。本当に涙がでてきちゃう。女の子だものね。
「しっかりして、
励ますように神宮寺那由多は言う。
うん?
神宮寺那由多は私たちと言った。
私ではなく、複数形の私たち。
ということは神宮寺那由多の他に誰かいるというのか……。
「さすがは私の
那由多は私が着ているジャケットのポケットを指差す。
私がごそごそとそのポケットを探ると何か固い感触がある。
それを取り出す。
それは一枚のカードだった。
クレジットカードより一回り大きい。固さは同じぐらいか。
そのカードにはあるイラストが描かれている。
闇をきりとったような黒色の軍服を着た青年が描かれている。丸いレンズのサングラスをかけていて、手には朱色の鞘の日本刀を持っている。
私はこのカードに描かれているキャラクターを知っている。
私のweb小説「鬼の啼き声」のキャラクターである渡辺学だ。
「そいつはイマジンカード。死神が悪魔のデスゲームを攻略するために用意したものだよ」
那由多が親切にも説明する。
なんとなくわかってきたぞ。
その死神とやらは無力な私のために味方として自作キャラクターを実体化できるようにしてくれたのか。
すでに神宮寺那由多が目の前にいる以上、疑う余地はなさそうだ。
「さあ、早速よびだそうよ」
那由多がせかす。
「でもどうやって?」
私はきく。
「簡単、イマジンワールドから出でよっていってみて」
かわいいウインクを那由多はする。
なにそれ、オタク心をくすぐるかっこよさじゃない。
わかったわ。
「イマジンワールドから出でよ!!」
ピシッとカードをもった右手を天にかざして、私は誇らしげに叫ぶ。
瞬時にして、私の真横に漆黒の軍服を着た男があらわれた。
「帝国陸軍中尉渡辺学、虚空の世界より見参」
黒衣の軍人はそう名乗った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます