第7話
モンスター名:デッドリーコボルト
レベル:75
腕力値:170
体力値:100
俊敏値:190
技術値:130
知力値:80
魔力値:20
運勢値:50
【鑑定】スキルで調べてみたところ、茂みの中に潜んでいるのはそこそこレベルの高いモンスター群で、やつらは雄叫びを上げながら一斉に襲い掛かってきた。犬のような顔をした獣人で、毛深い手にはそれぞれ棍棒やら剣やらが握られている。
『ウオオオオォッ!』
「くっ……!」
しかもざっと数えても数十匹はいるし、いくらなんでも多勢に無勢すぎる。一匹ずつ悠長に倒してたんじゃその間にやられてしまうってことで、俺は咄嗟に鳳凰弓を取り出し、弓を大きく引いた。
てかこれ、矢はないけど大丈夫なのか? と思ったのもつかの間、その途端、無数の赤い羽根の矢が俺の周りに出現した。よくわからないが、このまま矢を放つようにして手放せばいいんだろうか。
『ガアアアアアッ!』
「なっ……⁉」
すると体がブワッと浮くような感じがして、すぐ近くまで迫ってきていたコボルトたちに赤い羽根の矢がことごとく命中し、赤いサボテンのようになって武器ごと跡形もなく消えていった。
あまりにも強いし派手だしで鳥肌が立つほどだ。今のは相手との距離が近かったとはいえ、それでも俺は技術値が1なわけで、なんという精度と威力だ。さすが伝説の武器の一つなだけある……。
『レベルが上がりました』
お、半透明の窓が出てきて、レベルアップしたことを知らせてくれた。今のでどれくらい上がったか見てみるか。
名前:上村友則
レベル:86→151
腕力値:301
体力値:1
俊敏値:1
技術値:1
知力値:1
魔力値:1
運勢値:1
SP:550→1200
おおっ、またしても滅茶苦茶上がってるな。モンスターのレベル自体はそこまで高いものじゃなかったが、それだけ数がいたってことなんだろう。ステータスポイントに余裕ができたので、今度は腕力値以外も上げてみるか。
……うーん、どれがいいだろう? これだけ強いモンスターがガンガン出てくるような異世界だから、命が幾つあっても足りなさそうだってことで、保険として体力に振っておくのもありだな。呼吸したり歩いたりするだけでも経験値が上げられるっていう、【強化】スキルを安全な現実世界で主に使うとして、その際にかかる負担も少なくなるように思うし。
そういうわけで、体力値に300ポイントを振り分け、さらに身体的なバランスを取るために俊敏値と技術値にも同じように上げておいた。ステータスポイントは残り300ポイントになってしまったが、またレベルを上げて稼げばいいだけだから問題ない。
そのあと俺はどんな感じで動けるのか、試してみようとその場でシャドウボクシングを始めてみたところ、物凄く体が軽い上に信じられないスピードで拳を出せるし、そのたびに空気を切り裂くような音がして爽快だった。おいおい、こんなに変わるのか。これじゃプロのボクサーどころか、まるで孫悟空にでもなったかのようだな。
おや? なんかコボルトたちの死骸が消えていったあとに、魔石っぽい光る石があった。それもかなり明るめで、俺が洞窟で回収したものとは明らかに輝度が違うのがわかる。
『魔石(小)を獲得しました』
やっぱりそうだ。小なら微小よりは上ってことか。試しに【換金】したらどれくらいの価値になるのか使ってみたら、1万と表示されて驚くとともに、思わず承諾してしまった。手元に現金で一万円が出てきたので頬ずりしそうだ。自分でも卑しいと思うが、ホームレス生活が長すぎると絶対こうなる。
ちなみにこれ、異世界だと金貨1枚分らしい。銅貨=百円、銀貨=千円、金貨=一万ってところだろう。現実世界でお金が恋しかったあまりにすぐ変えてしまったが、異世界を旅するならここでの金も持っておきたいし、こういうのがもっとドロップしてほしいってことで、俺は運勢にも300ポイント振っておいた。知力と魔力については0だが、この先必要になったら上げればいいんだ。
『うわあああああぁっ!』
「はっ……」
なんだ、今の悲鳴は……? それも複数。【地図】スキルを使って叫び声がした方向を調べると、森の中で四人の男女が大型の熊のようなモンスターに襲われていた。
モンスター名:アビスベアー
レベル:125
腕力値:400
体力値:300
俊敏値:300
技術値:100
知力値:60
魔力値:50
運勢値:40
【鑑定】で調べたらレベル125で、どう見てもこの化け物に一方的に押されてるし早く助けないとまずいってことで、俺はそこまでダッシュする。うお、速い。そういや俊敏値に300P振ってたっけか。
『グオオオオオォォッ!』
「させるか!」
『ヌォッ……⁉』
今まさに、モンスターが大きな爪を袈裟懸けに振り下ろしてきたところで、俺は戦神の籠手で受け止めてみせた。熊のやつ、双眸を見開いてめっちゃ驚いてる。これだけ体格の差があるというのに、伝説の防具の効果通り、俺は吹き飛ばされるどころかその場から一歩も動かなかった。
さて、反撃開始といくか。次はこれの出番が来るんじゃないかなと、あらかじめ【倉庫】から取り出しておいて正解だった。というわけで、俺は容赦なく神獣爪でやつの顔を引っ搔いてやった。
『……ガッ……?』
「なっ……⁉」
正直、こっちのほうが驚いてしまった。豆腐とかマシュマロとか、そういう柔らかいものを切ったかのような感触がしたかと思うと、アビスベアーの体が一瞬で斜めに引き裂かれたんだ。これが神獣爪の威力なのか。俺の持ってる伝説の武器の中でも、随一の破壊力なんだな……。
『レベルが上がりました』
「…………」
いつの間にか目前にウィンドウが出て、レベルが上がったことを知らせていたが、それすら頭に入らないほど、俺は神獣爪の凄まじい威力に呆然としていた。しかも、モンスターが消えたあとには何か落ちていた。黒い毛に覆われた丸い物だ。なんだこれ。【鑑定】してみるか。
深淵の耳当て:聞きたい音があるときは、耳を澄ませば遠くのものまではっきりと聞こえる。逆に聞きたくないときは、深淵に入り込んだかのようにまったく耳に入らなくなる。
おお、こりゃいい。これと【地図】スキルと併用すれば、遠くにいる人の会話を聞きたいとき、あたかもその場に自分がいるかのような錯覚を味わえそうだ。その上、眠りたいときはこれさえあれば熟睡できそうだしスキル並みの効果があるレア装備だな。
こういうのがドロップするんだから、運勢値にポイントを振っておいてやはり正解だった……っと、レベルが上がってるし、装備も含めてどんな具合になってるのか確認するか。
名前:上村友則
レベル:151→201
腕力値:301
体力値:301
俊敏値:301
技術値:301
知力値:1
魔力値:1
運勢値:301
SP:0→500
スキル:【暗視】【地図】【解錠】【鑑定】【武器術レベル1→2】【倉庫】【換金】【強化】【年齢操作】【解読】
称号:《リンクする者》
武器:蛇王剣 鳳凰弓 神獣爪
防具:仙人の平服 戦神の籠手 韋駄天の靴 安寧の指輪 エデンの首輪 深淵の耳当て
ははっ……もう200レベルを超えてしまった。ってことは、レベル100ごとにスキルの枠が一つ解放されるらしいし、これで二つもスキルを覚えられる状態になったってわけだ。【武器術】もレベル1から2になってるし、次に戦うのが楽しみになってくるな。
「あ、あのぉ……」
「ん?」
後ろからおずおずと声をかけられたので、なんだと思ったら……あー、そうだった。自分のことに夢中ですっかり忘れてしまってた。アビスベアーに襲われていた男女の四人組を助けたんだった……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます