短編ファンタジー

rr

第1話

ファンタジー小説は、俺が書くような異世界転移や転生とはちょっと違う気がする。

しかし、そういうジャンルの小説を書いたら、面白いのではないだろうか? そう思ったのは事実である。

「でも、異世界転生物って人気あるからなぁ……難しいと思うよ」

「だよねぇ……」

「それにさ、今の君には、もっと大事なことがあるんじゃないか?」

「大事なこと?」

「そう、それは……」

俺は、ゴクリと唾を飲み込んだ。

そして、次の言葉を待つ。

「…………」

だが、佐藤さんは黙ったままだ。

その表情からは、何も読み取れない。

「えっ! そこで止めるんですか!?」

「いや~ごめんね。言いたいことは分かってるんだけどさ。私もちょっと恥ずかしくて言えないんだよ」

「そっか……まあ、確かにそうだよね」

佐藤さんの言う通りかもしれない。

こういうことは、面と向かって言えるものじゃないし。

むしろ、言わなくて良かったかも。

俺が一人で納得していると、彼女はまた話し始めた。

「でもさ、いつかは書いてみてもいいんじゃない?」

「えっ!」

まさかの提案に驚く俺。

すると、佐藤さんは笑顔でこう言ったのだ。

「だって、小説を書くっていう夢を叶えた君は、もう私の知ってる『内峰美稲』じゃなくて『岩崎理くん』なんだもん。だから、君の思うままに書いたらいいと思うよ」

彼女の言葉を聞いて、胸の奥底から熱いものが込み上げてきた。

同時に、目の前にいる女の子のことを、とても愛おしく感じる。

「ありがとう、佐藤さん」

気が付くと、俺は自然とお礼

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短編ファンタジー rr @jtczuk

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