『世界』




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『――では、諸君』



 ドーム都市の地下深く、窓一つない漆黒の議場。

 モノリス状のホログラムにて集うこと八名。無機質な円卓を囲んでは策略を巡らす。



『やはり……、王立軍は出ないか』


『でしょうな。例の船団の頭目はエインスワースの長女ですから』


『それこそが弱腰の王国の限界だ。離反者とて上級貴族デューク相手に弓は引けまいし、情報公開すら憚られる』


『無理もない。政体維持に関わるだろう』


『支配階級が弱みを見せれば市民革命でひっくり返る。不祥事には蓋、だ』



 彼らは企む。

 いかにして他国を陥れるのか。

 そして、自国の利とするのかを。



『だが、それこそ好都合。例の〈ディサイシヴ・ギア〉接収のまたとない好機だ』


『我々共和国は、いまこそ切り札を使えばいい』



 謀議の末に。

 決定は下された。



『……『自由船団』。奴等に海を渡らせるな』





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