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 空と水は澄んで。四季に緑が茂る。

 パンもコメも、肉も野菜も魚も美味い。

 店も商品もよりどりみどりな巨大複合商業施設ショッピングモール

 休みは家族でにぎわう笑顔……。



 「遠い世界」のおぼろげさから目覚めたのは、あの女がアラーム代わりに通信してきたからだった。



「哨戒任務、お疲れ様。ユーリ」


「哨戒といっても寝ていただけだ。敵はシステム側で自律探知するから、戦うとき起きてればいい」



 謎の少女船団長エリシア・エインスワースとの邂逅から一週間。

 流浪の少年傭兵ユーリ・オクトーバは彼女との契約を交わし、〈ディサイシヴ・ギア〉を操り任務に就いていた。


 要塞級の人型巨大兵器〈ディサイシヴ・ギア〉が構えるのは、エリシアら『自由船団』の停泊地から一五キロ内陸。


 レーダー、長距離兵装、共に死角皆無の高台。すなわち緊要地。

 任務は簡潔。このライン以東にアリ一匹通さない。以上。



「にしても。『自由船団』ってのはウソじゃなかったんだな」



 ユーリはここ一週間を思い返す。

 結論。エリシアはタダ者ではない。

 彼女は「船団長」と名乗ったがそれは事実だ。


 あの日ユーリが導かれた大陸東端の港湾には、見たこともない大船団が錨を下ろしていた。

 超大型タンカーやコンテナ船、クルーズ船を中心に三〇隻。

 それらを護るよう原子力空母スーパーキャリアーや巡洋艦、ミサイルフリゲート等々……、所属国も雑多な軍艦が九隻。『自由船団』はその名に違わぬ錚々たる陣容だった。


 どうやって集めた? 目的は? とエリシアに諸々訊いても「知りたいなら別の契約ね?」などと返してくる。たしかにその理屈はまっとうだし、ユーリ自身気にならないといえばウソになるが……。


 それはともあれ。

 今ユーリが求めるものは。



「通信はいいんだが晩飯は? もう夜の九時だが」


「ここよ」



 はあ? と首をかしげると接近中の振動波形。

 画像認識。小型車両が一台で、オフロードバイクのエリシアだった。

 しかもボディラインがくっきりな特殊ラバー製パイロットスーツ姿で。護衛抜きの一人で来たらしい。



「なんでココまで来た」


「ユーリずっとそこじゃない。直々にコミュニケーションよ。感謝なさい?」


「あんたがのこのこやってくる意味はない。普段どおり配送ドローンに運ばせろ」


「へえ。〈あんた〉?」


「……わかってる。エリシア、だ。わかったら早くメシをよこせ」



 だからドローン相手がラクなんだよと、ユーリはため息を交じりにディナーボックスを受け取ろうとする。

 ……だが。なぜかエリシア自身がサブアームのカーゴに乗っかる。



「なんのつもりだ」


「乗せてもらえるかしら? お外は怖いもの。『毒雨』に打たれたら死んじゃうわ」


 ユーリは辟易する。じゃあ生身で来るなよ。

 こいつ、意地でも機体ギアに乗り込む算段らしい。



「そんなテをくうと思……」


「あっ降雨警報! 早くなさい!」

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