第3話

腕の中で微睡むエルを見つめていると、不意にけたたましいアラームが響く。

瞬時にベッドから飛び降りて戦闘服を纏った俺は、部屋から飛び出そうとしてエルに引き止められる。


「……心配いりませんわ。このアラームは……アンチアーティファクトが出現した時に備えたものですから」


エルはそう言うとベッド脇のサイドテーブルに置いておいたティアラをつける。そして、いつものドレス姿になった。

エルのティアラは、アイテムボックスでもあるのだ。


「……さて、参りましょう。こちらですわ」


エルはそういうと、ベッドの下の部分に触れる。

そこから黄金の線が周囲に広がり、部屋の奥にキュリキュリキュリと扉が生成されていく。


エルは俺の手を取ると、部屋の中へと俺を誘う。


そこは、全面がディスプレイとなっている部屋だった。

扉や床にもディスプレイが設置されているため、扉を閉めると部屋のどこを見渡してもディスプレイがある。


そして部屋の中央には、タッチパネル式と思われる大きなコンソールが設置されていた。


エルがコンソールに手を置くと、ぶうんとホログラムが出現する。

ホログラムに描かれているのは、SF映画に出てきそうな、宇宙船のような形の船だった。


「ふふ。対アンチアーティファクト戦闘船、その名も“天龍”ですわ」


エルがさっと手を上に振ると、ホログラムの中の船のエンジンが起動し、さらにインターフェースの高度計がぐぐっと上昇を始める。


同時に全面のディスプレイが起動し、地上がどんどんと遠ざかっていく様子が映し出されていた。

全面が外の景色のため、体感では単身空中にいるのと変わらない。普段から



「……ワープシステム、起動。目標……X反応地点」


エルはそう言いながらコンソールを手早く操作する。


「……戦闘準備を」


正直置いてけぼり感が強いが、俺はなんとなくムラクモを取り出して腰につける。


ふっとディスプレイに映し出されている景色が入れ替わる。ワープした場所は、魔境“Origin”……いや、その跡地だった。


どうやら、ダンジョンとその周囲の魔境は俺たちが去った後に崩壊してしまったようだ。

上空をみると、いつか見たあのワープホールがぽっかりと空に穴を開けている。ただ、その大きさは先日見たのとは桁違いに大きかった。


「……ん。すごい船」


と、“誓いの指輪”を介してワープしてきた澄火。同じくワープしてきたシュライエットと共に、興味深げに部屋を見渡している。


「ふふ。でしょう?」


エルは珍しく若干得意げに言う。


「……さあ、防衛戦と行きましょうか」

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