第4話

そして、あっという間にダンジョンへと到着した。


ダンジョンの周囲には、誰の能力のものなのかフィールドが展開され、モンスターが寄り付けないようにされている。


シュライエットが爆破の連鎖を解除すると同時に俺たちはフィールドの中へと飛び込んだ。


流石というべきか、多くのトップ探索者が既に現場に到着していた。俺たちは三十番手と言ったところか。


「遅かったですね」


既に到着していた師匠が声をかけてくる。


「少し絡まれましてね。……これが、Originのダンジョンですか」


ダンジョンの入り口は特に変わったところはない。

恐らくはここまで来ていただろうエルヴィーラは、一体どういう思惑があったのだろうか……


『……こちら作戦本部。突入作戦を開始せよ。目標はOrigin内部の探索及びダンジョンマスターの発見・捕縛。作戦の詳細は現場判断によるものとする』


作戦開始の合図が耳につけているイヤフォンから流れていく。探索者たちは、次から次へとダンジョンの中へと入っていく。


「一緒に行きましょう」


そう声をかけてきたのは師匠。

師匠は元々高い戦闘力を持つ上、自己主張の激しいトップ探索者には珍しく補助戦闘能力もある。

さらに、聖痕スティグマによる俺とのシナジーもある。


誘いを断る理由はない。


俺は師匠と澄火、そしてシュライエットともにダンジョンへと飛び込む。

ダンジョンの中には分岐はなく、ただ真下に続く通路が一つ伸びている。


100mほどその通路を落下していくと、大きな大瀑布と、その周りを囲む豊かな森があった。


俺たちは森に着地して、周りを見渡す。特にモンスターがいる気配はしなかった。


「……ふむ」


師匠が何かを思案するように上を見る。


「星の配置が違いますね」


今は昼間(多分。この辺り一体が明るいので、おそらく昼間だろう)だが、師匠には星が見えるようだ。


「……外とは違う世界……ということでしょうか?」

「ええ。おそらくは」


エルは、世界を繋ぐ機能がダンジョンにはあると言っていた。

それに、世界の各所にこういうダンジョンは存在する。


この前師匠と勝負したダンジョンもその一つだ。


異なる世界。エルが何かを遺したのだとすれば、それは……


俺はエルの研究室にあった黄金の短剣を取り出す。そっと引き抜くと、エルの幻影が現れる。

思わず触れようとするが、幻影は俺の方を見ると「こっちだよ」という風にひらひらと飛んでいく。


「行こう」


俺はそう声をかけて、エルの幻影を追った。

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