第3話

流石に本気で動くと体の耐久が保たないのか、俺の体から少し軋むような音が鳴る。

俺はそれを無視して、澄火とシュライエットに問いかける。


「……どうしようか、これ」


流石に殺すのはあれだし、ただここに置いていったらそれは死刑宣告と同義である。


「……ん。仕方ない」


澄火はそう言って懐から護符を取り出す。

ただの和紙に澄火が一生懸命図柄や文字を書いた、手作りの護符である。もちろん、特に何の意味もない。


澄火は紫電でそれを燃やすと、「権能発動」と小さくつぶやいた。


権能を持つ者にしか見えないフィールドが鎖で地面に縛り付けられた探索者たちを覆う。


「……あとは私が。プリムスの瞳……ゲート、起動」


シュライエットがそう言って金色に瞳を輝かせる。

一瞬の後、探索者たちの姿は消え失せていた。シュライエットがどこかへ転送したのだ。


ただ……


「……失敗してないか?」

「…………」


俺が切り落とした両腕が転がっているのでわかりにくいが、あちこちに臓器や足が落ちている。

中には、心臓と思われるピクピクと動いている臓器もある。


「……まだ俺たちを転送するのは勘弁してくれ」

「……むー」


シュライエットは少し不満げにほっぺを膨らませるが、流石に転移で心臓が抜き取られるのは勘弁してほしいところだ。


「ていうか、流石に死んでないよな?」

「……ん。結構強かったし、心臓がなくなったくらいじゃ死なない」

「……そうか?…………そうだな」


俺は細かいことは気にしないことにして、ダンジョンの方を見据える。


結構無駄な時間を浪費してしまった。


「……旦那様。今日は調子いいし、せっかくだから私に超必を見せるよ」

「超必?」


なんか今日のシュライエットはやたらとテンションが高い気がする。これまでずっと権能を会した爆撃のみでの参加だったし、一緒に戦場で戦えるのが嬉しいのかもしれない。


シュライエットはダンジョンの方へと指先を向け、こう呟く。


「……名付けて……爆縮・黄金こがね


そこはかとなくダサいネーミングセンスなような気がするが、俺は黙っておくことにした。


シュライエットの黄金の瞳が輝くと同時に、シュライエットの指先から極太のレーザーのような爆発が飛び出す。


全てを薙ぎ払う、圧倒的破壊力を伴った爆発は、モンスターを巻き込みつつ高速でダンジョンの方へと進んでいく。


「……行くよ!」

「……ああ」


そうしてできた隙間を、俺は翼を展開して地を這うようにして飛んだ。

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