第2話
シュライエットの爆破を起点にして、俺のビームと澄火の紫電で道を切り開くようにして進んでいく。
魔境のモンスターは強力だが、『権能』とユニークスキルを駆使する俺たちの猛攻に耐えられるほどではない。
「……ん。若くん」
「……ああ。何者だ?」
異質な気配を察してモンスターの奥にそう問いかけると、ピインとコインのようなものが飛んでくる。
俺は反射的にビームでそれを撃ち落とそうとしたが、それよりも一瞬早くコインが光り輝き、その効果を発動する。
「ぐっ!?」
るああああん……と、得体の知れない音が周囲へ響き、俺たちの足を一瞬止める。
「悪いが、ここから先通すことはできない」
そうしてできた隙に、モンスターの陰からそう言って姿を表したのは、金髪のイケメンの探索者。
ダンジョン“Tear”の攻略作戦のときに、ダンジョンマスターを殺そうと躍起になっていた探索者だ。
「旦那様。彼はアメリカダンジョン探索者協会の暗部だよ」
シュライエットがそう耳打ちしてくる。
「このコインは、どんな探索者でも一時的に足を止めるほどの超音波を発する、便利アイテムだ。……最も、本来開発しようとしたものとは違うらしいがな」
と、上から次々に探索者が降ってくる。
どうやら、散らばっていた探索者を呼び戻したようだ。
「そこにいる犯罪者の引き渡し、及び魔境“Origin”からの引き上げ……それが、俺たちの上司からの条件だ」
隣にいるシュライエットの体が強張るのを感じる。
俺はパトラムの装甲を解除した右手でそっとシュライエットに触れ、心配する必要はないことを伝える。
「師匠、本部…………ダメか」
俺は無線を試したが、当然のように通じなかった。敵の能力か……あるいは、先ほどのコインのようなアーティファクトに近いものか。
「……どけ。今なら見逃してやる」
俺は
「おいおい、俺たちと殺り合う気すらないのか?」
鎖という一見殺傷能力の低そうな武器を展開したからか、金髪の探索者はそう言って強気に笑う。
「それだと……死んじまうぜ」
金髪の探索者はそういうと、腰の剣を引き抜いて地面を蹴る。
動きにあまり隙がない。日本でいうSSくらいの実力はありそうだ。
「…………」
倒すのは簡単だが、おそらくやつらのバックにはアメリカ政府がいるはず。
来栖財閥への影響も含め、あまり面倒な事態になるのは避けたいところだが……
「……ん。やっちゃえ」
「…………澄火さん?」
いつも通りというべきかなんなのか、澄火が過激なことを言い出した。
「悪党死すべし。慈悲はない」
澄火の方をチラリと見ると、驚くほどに冷たい視線で相手を見ていた。
俺はあれこれ考えるのをやめた。
「…………少し本気を出す。悪く思うなよ」
––––
俺はステータス出力を限界まで高め、久々に最高速度で動く。
そうして初めて実力差を察したようだが、もう遅い。
「……な!」
俺は一瞬で全員の両腕を切り落とし、鎖で地面に縫い付けた。
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