第1話

俺は澄火とシュライエットとともに、所定のポジション……魔境の外周の上空1000mの地点へと移動する。


魔境の内部には不定形の生物やらやら巨人やら、多種多様なモンスターが蔓延っている。

世界中のモンスターの博覧会とでも言わんばかりだ。


「……ん。準備完了」


澄火はそう言って俺の背中に手を当てる。


「“プリムスの瞳”開放。同じく準備完了だよ」


シュライエットは瞳を金色に輝かせる。


俺は二人に頷きを返し、パトラムの装甲を全身に発生させる。


俺の右、外周をなぞるようにして1km離れた先では、師匠––––『天使』が待機している。

その隣には、また別のNo.1探索者が、そしてその隣にも……と言った塩梅で、都合50人(正確には50組)の探索者が上空で待機中だ。


『作戦開始まで、一分』


外周付近に、金や経験値、名声を求めて集まった多数の探索者が見える。

口笛を吹くもの、雄叫びをあげるもの、精神を統一させるもの……戦いが始まる前特有の、混沌とした空気が流れている。


それを眺めていると、カウントダウンが始まってしまった。


『……作戦開始まで、5……4……』


ヒュィィィィン……という機械音と共に、パトラムの装甲の表面にブルーグリーンの線が走る。


『3……2……』


澄火が紫電によってエネルギーをパトラムに流し込む。


『1……』


ゼロ。


俺は頭の中で数え、一気に俺のMPすべてを消費してビームを放つ。


「……瞳よ」


シュライエットの瞳がまばゆい光を放つ。

紫がかった極彩色をしているビームの色が、シュライエットの権能の影響を受けて金色へと変化する。


澄火とシュライエットの力をも内包したビームは俺の腕の動きに合わせ、魔境の周縁部から中心へと動き、通ったものの周辺全てを薙ぎ払う。

同じような、各国のトップ探索者による渾身の遠距離攻撃が上空のいる探索者たちからそれぞれ一本、計50本同時に放たれた。


一瞬の静寂の後、探索者たちは雄叫びをあげて、魔境の内部へと次々に侵入していく。


開戦の狼煙だ。


俺は翼を広げ、魔境の中心のダンジョンを目掛けて急速で下降する。

しかし、その軌道が途中で捻じ曲げられ、俺はダンジョンから4km離れた地点へと着地した。


「邪魔すんじゃねえ」


俺は犯行者と思われる丸いポヨンとしたいわゆるスライムのようなモンスターに掌を向け、ビームをぶっ放す。

しかし、さすが魔境のモンスターというべきか、みるみるうちに再生していく。


さらに、周囲からもわらわらとモンスターが集まってきた。


「……若くん」

「……ああ。一点突破だ」


俺たちは頷きあい、早速ダンジョンの方へと走り出した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る