魔境攻略作戦“Origin”

プロローグ

いよいよ今日は“Origin”攻略作戦の開始日である。作戦司令部には、既に各国のNo.1が集結しており……常人には耐えることすら難しい強者のオーラを部屋中に撒き散らしている。


「ふふ。いつも弟子の活躍を聞くばかりでしたが……今日は私も活躍させてもらいますよ?」


と、我が師匠。それに目を剥いたのは、フランスのNo.1探索者『Lumière』だ。


「あなた、弟子なんて取るタイプだったかしら?」

「人は変わるものですよ」

「そうだな。この俺様が、結婚するなんて考えもしなかったものだ」


アメリカのNo.1探索者『ザ・ヒーロー』はそう言って前髪をかきあげる。

ちなみに、この『ザ・ヒーロー』といういかにもアメリカ的な二つ名は、アメリカ探索者協会のNo.1に代々送られるものだ。

彼の以前の二つ名は『ザ・ナルシスト』である。


「……え、あなた結婚したの!?」


と、着ぐるみの中から言ったのはオーストラリアのNo.1探索者『空間使い』。着ぐるみの中にいるのも、能力の一端らしい。


「まあな。ま、俺様のクールさなら当たり前だがな」

「…………」


白けたような視線が部屋中から降り注ぐ。


他にも、多種多様だが間違いなく強力な探索者が多数ここにいる。


「……旦那様」


と、傍にいるシュライエットが珍しく甘えるように手を握ってくる。チラリと見ると、若干顔色が悪い。


俺はそっとシュライエットの眼帯に手を伸ばし、外してやる。


「無理するな」

「すまないね、旦那様」


すると、美しく金色に輝く瞳が、こちらを見返してくる。


「……さて、そろそろかな?」


と、魔女のような格好をしたオランダのNo.1探索者、『冬の魔女』がつぶやいた。


『……こちら作戦司令部。作戦開始は5分ごととなります。各員は事前にお知らせしました持ち場についてください』


瞬間、部屋の空気がピリッとしたものに変わる。


ウィィィィィン……という機械音を立てて、天井が開き、次々に探索者が飛び立っていく。


俺はパトラム、聖痕スティグマの翼、そして『炎刀・氷刀』の翼……三対の翼を展開する。


「……行くぞ」

「……ん」


と、澄火。いつも通り、落ち着いた様子だ。


「了解だよ、旦那様」


シュライエットは権能を解放したことによりいつもの調子を取り戻したようだ。

今回は権能を活かした遠隔爆撃ではなく、俺たちと共に戦場で行動することになっている。


「ふふ。頼もしいですね」


と、『天使』。純白と漆黒の、二振りの剣を手に携えている。


俺は三人に頷きを返し、大空へと飛び立った。

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