第7話

キュイイイン……という心地よい音と共に、アーティファクトの翼に幾何学的なブルーグリーンの光が走る。


そして、俺の視界に高度、速度、そして周囲のマップが表示される。

この前玲奈に見せてもらった、今開発が進んでいる眼鏡型のAR端末を装着しているような感じだ。


尤も、アーティファクトのAR技術はさらに進んでいて、特に目に何もつけていないのに視界がAR化されているが。


「……ん。名前は……『パトラム』とか?」


と、羽を目を輝かせながら観察している澄火が名前を提案してくる。


パトラム……確か、サンスクリット語で翼という意味だったか。


シンプルで語感もいい。


「そうだな。このアーティファクトの名前は、『パトラム』ということにしよう」

「ん。じゃあ私は後方支援するから」

「ああ。まあ、軽く片付けてくる」


俺は澄火にそう言って、地面を蹴る。


そして、エンジンから供給される推進力を以て、空へと舞い上がった。


重力や慣性を制御する技術でも使われているのか、いつにも増して体が軽い。


そして、加速感もいつもより強い。

エンジンにMPを投入すればするほど、それが何倍にも増幅されたエネルギーとなり、爆発的な推進力を生み出しているようだ。


これが、ピース4……エンジンの本来の機能なのだろう。


「さて、まずは……」


俺は最初に、パトラムの飛行性能の限界を試してみることにする。

敢えて他の飛行手段––––ユニークスキル『炎刀・氷刀』による飛行、そして聖痕スティグマの黒白の羽––––を使わずに、パトラムだけで上へ上へと飛翔する。


一気に俺のMPの一割を投入し、全てが推進力に変換されるイメージを送る。

爆発的な推進力が生まれ、速度計が秒速340m……地上での音速を振り切り、秒速1000mを突破する。


そして、あっという間に俺はアンチアーティファクトの機械兵と回敵した。


「捻りを活かして……全身の力が乗るように……」


俺は拳を固め装甲を展開する。そして、玲奈直伝の拳打を放つ。

機械兵は僅かに抵抗しようとしていたが、あえなく木っ端微塵に打ち砕かれる。


「次!」


俺はニャルトラ・ステップの能力……蹴りの強化を思い出しながら、別の機械兵に拳打を打ち込む。


数拍遅れて、ドオン……という音が鳴り、大きな爆発が発生する。機械兵が12体、巻き込まれて吹き飛んだ。


予想通り、ニャルトラ・ステップの攻撃強化が、装甲を生成すことで、体の表面のどの場所からも発生させることが可能になったようだ。

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