第3話

俺は研究所を歩き回り、何かめぼしいものがないか探していく。


しかし、研究所の中は異様なほどに片付いていた。

特に資料が散らばっているようなことはなく、一体何を研究していたのかを知る手がかりさえもほとんどなさそうだ。


「……うーむ」


俺は傍のディスプレイに触れる。

しかし、うんともすんとも言わなかった。


「もう施設が死んでるのか?それとも……」


俺は部屋にある三つの扉のうち、俺が来たのとは別の部屋へと通ずる扉を開く。

そこには、今までのと同じような、アーティファクトの生成機があった。最後のアーティファクト、ピース5の生成機だろう。


中央のディスプレイには、俺の掌と形が全く同じ手形が表示されている。

俺は部屋の中央へと進み、そのディスプレイに手を押し当てる。


…………ドクン。


数秒ほどして、恐ろしい量のMPが吸収され始めた。

ユニークスキル『能力奪取』により総量が底上げされ、さらにユニークスキル『超回復』によって回復量が大幅に上昇した俺のMPでも、結構キツイ量が吸い上げられていく。


そして、キュリキュリキュリと空中に、大きな翼のような形のアーティファクトが生成されていく。


「…………?」


と、アーティファクトの生成が停止する。

見たところ完成したようには思えないが……一体どうしたのだろうか?


「…………ああ、なるほど」


俺は一分ほど考えてから、虚空から羅針盤を含むアーティファクトを全て取り出す。


すると、アーティファクトが互いに結びつくようにして、再び生成が開始する。


今までのピース1からピース4……そして羅針盤が全て、ピース5の素材として翼へと組み込まれていく。


羅針盤はバラバラに分解され、翼のパーツとなる。

ピース1のアム・レアーは翼へと格納される。

ピース2のニャルトラ・ステップは、分解されて一部のパーツが翼へと組み込まれると、溶けるようにして消滅する。

ピース3の天輪、そしてピース4のエンジンは、翼の中心にガチリと嵌ると、装甲によって見えなくなった。


全てのピースが一つとなり、アーティファクトが完成していく。


俺はその光景に、どこまでも計算され尽くした合理性を見てとった。


やがてアーティファクトの生成が終わり、一対の美しい機械翼が現れた。


俺はアーティファクトピース5と思われるそれの表面にそっと触れる。


すると、俺の意識がぐわりとアーティファクトの中へ引き込まれた。

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