第4話

気がつけば、俺は研究所の中にいた。

先ほどの部屋と全く同じ部屋……しかし、今まさに使用されているからか、だいぶ散らかっている。


「……ダメだ」

「……博士?」

「ダメだダメだダメだダメだ!この兵器は確かに一騎当千だが……エネルギーが足りない!我らのエーテル……ざっと六十人分を消費してようやくまともに動くかどうかだ」


と、部屋の中心から声がする。

俺は無意識にそちらに向かって移動しようとして、ふと視線を動かして自身の体を見下ろす。


どうやら俺は今意識だけしか存在しないのか、自分の体が存在しなかった。


しかし視線は動くし、移動しようと思えば移動できる。なんとも不思議な感覚だ。


俺はふよふよと部屋の中心まで移動する。

会話を交わす二人は、人型ではあったが、明らかに人間ではなかった。


指が六本あり、指以外の関節の数は同じだが、体型も少し人間のそれとは異なる部分がある。


「……それならば、エネルギーの送受装置を作れば……」


おそらく助手と思われる赤色の髪をした人物がそういうと、青色の髪をした「博士」とよばれている人物が答える。


「それだと個人用兵器の意味がなくなる。それに……あまりにも危険だ」

「…………」

「このエンジンはあくまでエネルギーを増幅させるだけで、無から作り出すことはできない。我々には……到底扱えないということだ」


と、研究所にけたたましく警報が鳴り響く。


「……そして、時間切れか。全く」


そういうと、博士は側のデバイスを操作する。


「何をするおつもりですか?」

「……お前が卒業論文で発見したと主張していた位相空間に転送する。お前はダンジョンがある……と書いていたな」

「……あれは……学会では」

「まあ、一蹴されていたな。だが、私は存在すると確信している」

「……博士」


博士は会話を交わしながらも、デバイスを操作する手を止めない。


「位相空間にこの研究所と全く同じ空間を構築……さらにそこからプロジェクト####をパーツごとに分割する。お前が作ったダンジョンへのアクセスルートをそのまま使わせてもらう」

「それは……しかし」

「ああ。この世界の存続を諦める。ただ……私たちの遺産は残り続ける」


そういうと、博士はデバイスを操作して空中に映像を表示する。


おそらくは外の光景だ。

空を埋め尽くす無数の艦隊。それぞれの船から大量の白いロボットが出現し、地上を焼き払っている。

立ち向かっているのは、銃を持った超人的な身体能力を持つ人型の生物たち……そして彼らが操る機械。


現代の地球を遥かに超える科学文明を持っているのか、それらの性能は凄まじいものがあるが、白いロボットたちはそれをものともせずに蹂躙している。


「お前は我々の科学の産物をダンジョンに転送し続けろ。この研究所に貯めてあるエネルギーが尽きるまでな」

「……はい!」


助手と思われる人物は、そう返事すると席につき、デバイスの操作を始めた。

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