第11話

俺は権能を発動させながら、周囲に純白と漆黒の光球を出現させる。


「……発射ファイア


そしてリリアと戦闘を繰り広げる『死神』に向かって、光球からビームを放つ。


権能の攻撃は、同じ「法則を歪める力」を持つ権能でしか打ち消すことができない。

故に、リリアの権能に由来する俺の攻撃を、死神は権能で受けるか、はたまた回避するかの選択を突きつけられることになる。


「……ん。私も」


澄火はそういうと、目を閉じて両手を広げる。



澄火の周囲から青色のオーラが展開され、一瞬で戦場全体を覆う。


「……ぐっ……澄火?」


その瞬間、俺は猛烈な重力を受けたような感覚に襲われ、思わず膝をつきそうになった。


気力がどんどんとなくなっていく感覚に襲われ、戦おうという意思がどんどんとなくなっていく。


なんとか精神を保ち、俺はビームを撃ち続ける。


「……ん。ごめん対象を切り替える」


澄火は俺の様子を見て、パチリと指を鳴らす。

すると、一気に体が軽くなった。

この精神攻撃に、『死神』の動きが僅かに鈍くなっている。


勝負を決めるなら……今だ。


(……師匠)

(……ええ)


俺とリリアは空中に無数の鎖を出現させる。

そして、俺が直感を鍛える訓練をした時のように、鎖のドームを作り出す。


「自ら戦場を狭めるとはな」


『死神』はそういうと、鎌に禍々しいエネルギーを纏わせる。


「……


『死神』が鎌を振るうと、ドームの中に即死属性のある黒い靄が広がっていく。


「……


リリアは白い剣を掲げる。

剣の先端が輝き、光が影を消し去るように黒い靄を消滅させていく。


その間にも、鎖がどんどんと増殖し、『死神』の動きを制限する。


『死神』は鎖を切り裂き、なんとか対処しようとするも、鎖の増殖スピードの方がはるかに速い。

どうやら『死神』の権能は、非生物に対してはあまり力を持たないようだ。


「……チェックメイトです」


リリアはそう宣言すると、剣を周囲に浮かべ、背中に光輪を出現させる。


「……


俺の背中に光輪が出現し、リリアのそれと同期するように輝く。聖痕スティグマが熱を持つ。


俺はリリアから流れてくるエネルギーを制御し、リリアの技の発動を補助する。すると、『死神』を囲むように、魔法陣が出現する。


『死神』は澄火の精神攻撃に疲弊し、ついに鎖に捕まっているため、動けないようだ。


「……


そしてリリアの詠唱が完成する。


「……


ふっと『死神』の姿が消え去る。

後に残されたのは、『死神』の名と共にその姿が描かれた、一枚のカードのみだった。

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