第7話
俺はニャルトラ・ステップで空を蹴り、死神へと肉迫する。
「届かんぞ」
「それはどうかな?」
即座に大鎌によって対応する死神。しかし、ちょうどその時都合よく飛んできた探索者たちの遠隔攻撃により、大鎌の動きが一瞬鈍る。
その隙を見逃さず、俺は両刀で以って斬る。
上体をそらすことでギリギリ回避するも、しかし運よくそこに飛来してきた狙撃が命中する。
「……澄火」
「……ん。どんどん弾幕を張らせる」
「ああ。俺は気にする必要はない……今の俺に当たらないからな」
俺はその調子で、どんどんと攻撃を仕掛けていく。俺の攻撃は全く当たる気配がないが、その代わりに弾幕がどんどんとヒットしていく。
「……因果律の操作といったところか?」
「さあな」
実際のところ、この力がどういうものなのかは俺にも全く分からない。
ただ自身の運を引き上げているだけなのか、因果律を歪めて都合のいい未来を掴みとっているのか……はたまた、当たらないはずの攻撃を無理やり当てるように軌道を歪めているのか。
「……ふむ。評価を一段引き上げよう……そして、それに応じて私も権能のレヴェルを一段引き上げよう」
やはりこの力は権能によるものか!
「我は死を宣告する者」
死神の背後に、時計を模した魔法陣のようなものが展開される。
そしてそれと同時に、この魔境全体を覆うフィールドが出来上がったのを、権能を持つ俺と澄火は感じ取った。
魔法陣の時計は現在六時をさし示している。それは不規則な速さで針を刻み続けている……一体どういう性質のものかは分からないが、あれを発動させたらまずそうだ。
方法は……同じ権能で相殺するしかない。
「澄火!」
「……ん!」
澄火は体を紫電に変化させ、俺に纏わりつく。そして銘刀・紫電を俺の手に出現させた。
銘刀・紫電は『怠惰』の力を示す青色のオーラを纏っている。これで斬りさえすれば、あの魔法陣も崩壊するはず。
「……無駄だよ」
しかし先ほどとは違い、死神は俺の攻撃を無視して、弾幕を貼り続けている探索者たちの方に向かい、次々と命を刈り取っていく。
「……ちっ」
俺は無力感を覚えながらも、澄火の紫電を活かして死神に追いすがる。
しかし、逃げに徹した死神の動きは変則的かつ素早く、俺はなかなか追いつくことはできない。
「……若くん!早くあの時計を壊さないと全員死ぬ!」
「……!」
全員死ぬ……そうか、このフィールドはいわば全体即死攻撃の予測線か!時計の針は、それが発動するまでの時間といったところか。
俺は天輪によって領域を顕現させ、さらに速度を増して死神の背後に飛ぶ。
「予測できないとでも?」
死神は嘲笑いながら俺の攻撃を受け止める。
死神の背後の時計の針が、0:00を示した。
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