第6話

……おかしい。


いつまで経っても、死神のユニークスキルを奪い取れない。


いや、むしろユニークスキルがないからこそ、奪い取れない……?


「……ふむ。負の感情をエネルギーにするスキルか……悪いが、利用させてもらうぞ」


放出される漆黒のエネルギーを、逆に死神は吸収していく。

これはマズイと思った俺は能力奪取の発動を停止させ、後ろに飛び退く。


死神は手に持っていた槍を掲げる。すると、槍が死神を象徴するような大鎌へと変化する。


その隙を見逃さず数人の探索者が同時に攻撃を仕掛ける。


「退けえええええええええええ!」


俺はそう大声で警告し、自身も誓いの指輪を利用したワープで澄火の元へとワープする。


死神は俺の叫び声など意に介さず、漆黒のエネルギーを大鎌に纏わせる。



探索者たちによる同時攻撃より一瞬早く、死神が大鎌を振るう。

黒いエネルギーが周囲を駆け抜け、周囲の探索者の命を一瞬で刈り取った。


あまりにも強すぎる。この強さは、ユニークスキルでは説明がつかない。

能力奪取の効果が発動しなかったことから考えても、おそらく奴が持っているのはユニークスキルではなく……


と、死神は澄火のもとに退避した俺の姿を認めると、周囲に大量のモンスターを召喚する。


手に鎌を持った、小さな骸骨のような見た目のモンスター。

ぬいぐるみ風味で可愛らしい見た目をしているが、その性能は凶悪そのものであることを、俺の直感が示している。


死神はそれらのモンスターと共に、こちらへと飛んでくる。


……一体どうすれば?いっそ、シュライエットの下に逃げるか?


「……ん。奴が持っているのはおそらく権能……ならば、こちらも権能で対抗すればいいだけの話」


澄火はそういうと弱気になりかけた俺を叱咤するように背中をポンと叩く。

そして、身に纏う空気をずしりと重くさせた。



澄火はそういうと、青色のオーラを死神の方へと展開する。


死神が呼び出したモンスターが青色のオーラに触れた瞬間、跡形もなくモンスターの体が消えていく。


そのままオーラは死神の方へと進む。しかし、死神は周囲に黒いオーラを放出させると、青いオーラを阻んだ。


「……ん。若くんも」


澄火はそう言って促してくる。


俺の知る権能『色欲』の効果は、二つ……一つは、自身の持つ力を、愛を交わしたものに与えるというものだ。

澄火もシュライエットも……そして今は亡きエルヴィーラも、あらゆるステータスが俺の権能によって上昇している。


そしてもう一つは、先ほど使用した愛憎を操作する力。

その気になれば愛を憎しみに、憎しみを愛に反転させたり、無理やり憎悪や愛情を植え付けることもできる力だ。


だが、まだまだ『色欲』には隠された力があるはず。俺は自身の権能に意識を集中させる。


……見つけた。


俺は存外あっさりと、それを見つけることに成功した……まるで、『色欲』が自らその力を解放されたがっているかのように。


「……


さあ、反撃の時間だ。

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