第3話

「脱出するか。来た道を戻ろう」

「……ん。了解」


俺は背中の翼を展開し、澄火と共に作戦会議室への通路を上へ上へと昇っていく。


そして、黒子ビハインドザシーンのメンバーとの戦闘が起こっていたであろう作戦会議室に到着した。


激しい戦闘の跡があり、黒子ビハインドザシーンのメンバーの死体と共に、後から一緒に突入した探索者のであろう遺体もいくつも転がっている。

俺はひとまず死体を全て回収して、脱出を目指す。


おそらく他の探索者たちはもう脱出しているだろう。俺たちもダンジョンが崩壊する前に、とっととダンジョンを出てしまうとしよう。


「……澄火」

「……ん!」


俺は澄火と共にシュライエットが爆破した迷路地帯を抜けて、ダンジョンを去る。


ギイン……


その瞬間、俺は欧米の探索者に斬りかかられた。俺は二刀でそれを受け止めて、アム・レアーによるカウンターを狙う。


「貴様は……敵か?」

「……敵?」


と、探索者が話しかけてくる。

理解が追いつかぬまま、今度は俺たちのところに弾幕が降ってきた。


俺は探索者を弾き飛ばし、周囲に天輪によるバリアを展開する。


「どういう状況だこれは?」

「……ん。バトルロワイヤル?」


ぐるりと周りを見渡すと、探索者同士の戦いが各所で発生している。

それぞれの戦いが相互に干渉し合い、戦闘相手が変わったりしていて、まさに混沌とした状況だ。


「……どうすんだこれ?……と」


俺は飛来した様々な飛翔物を“絶界”で破壊する。


「……俺から離れるなよ」

「……ん。もちろん。ずっとそばにいるって誓ったから」


俺はひとまず地上から離れるべく、バリアを保ったまま上空へと飛ぶ。


「……とりあえず……麻奈さんに連絡してみたら?」

「……そうだな」


俺はイヤフォンを耳にはめ、電話を掛けようとする。

しかし、残念ながら圏外だった。

先ほどから司令官の通信も届かないし、誰かのスキルで電波が妨害されている可能性が高そうだ。


「……黒子ビハインドザシーンのメンバーをとりあえず全員排除する必要があるな」


この事態の原因は、探索者に紛れ込んでいた黒子ビハインドザシーンのメンバーが周囲の探索者を襲い、誰が敵で誰が味方かわからない疑心暗鬼の状態を作り出したことに端を発するものだと思われる。


まずこの騒動をおさめるためにも、黒子ビハインドザシーンサイドの人間––––探索者に紛れている戦闘を演出するためのサクラを含めて––––排除していく必要がある。


「……ん。それならいい方法がある」

「……いい方法?」

「……ん。私に任せて」


一体何をする気なのだろうか……

俺はなんだか無性に不安になった。

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