第2話

そのまま通路を進んでいくと、作戦会議室という標識がある部屋へと辿り着いた。


俺はアーティファクト:ピース2……ニャルトラ・ステップも活かし、扉を蹴破って中に入る。


「……おや、まさかこんなに早く来るとは……迷宮に我らの特殊戦闘員にと、障害はたくさん用意しておいたはずだが?」


中には大きなテーブルがあり、その奥には様々な書類が積まれた事務机があった。そして、そこにはホテルへの襲撃で見た覚えのある男が座っていた。


あの男は……ワープスキルを持っている奴だ。


「……まあいい。お前たち、やれ」


男は冷酷な目でそういうと、傍のレバーを操作する。すると、男は椅子ごと真下に落ちていった。


「はあ!」


そしてどこに隠れていたのか、周囲から黒服の戦闘員たちが飛び出してくる。


「待たせたな!」


と、後続の探索者が到着する。

俺は戦闘員の処理を任せることにして、ワープスキルを持つ男を追うべく椅子があった場所を踏み抜く。


「運命の愛、比翼の連理、忠義の献身、愛の契約、天使。交わらぬ道は一つとなり、進む。全てが消えるその日まで……領域よここに」


俺は天輪によって自身の周囲に領域を顕現させる。そして、ベクトルを操作して、下へと超高速で降りていく。


一瞬で地面へと辿り着き、俺は正面の開いた扉を潜る。


「……特に何もないな」


攻撃されるとも思ったが、特に何もない。俺は一旦領域を解除して、部屋の中を見渡す。


部屋は大量の実験器具で埋め尽くされていた。かなり血生臭い匂いがする。


床には血痕と思われる跡がこびりついている……俺は直感的に、ここが一体何の実験室なのかを悟ってしまった。


「……澄火?」

「……ん」


と、澄火が指差す先には、ワープスキルを持つ男の死体があった。口から血を吐いている……おそらくは、自殺だろう。


情報を抜かれないためか、あるいは俺にスキルを盗られないためか。


俺はそばにあるブルーシートを被せ、部屋の探索をする。


部屋のもう一つの扉を開くと、大量の人が入ったカプセルが並んでいる。

入っている人間には必ずどこかに手術痕がある。ひょっとしたら、この実験の目的は……


「……ん。多分、若くんが考えているのであってる」

「……だよな。戦闘員を量産しようとしたのか?」

「……ん」


俺はそばにある端末や資料を軽く目を通してから、あるものは腕輪に収納し、そして研究資料は全て燃やしていく。


この実験は危険すぎる。封印したほうがいいだろう。


と、ドドドドという振動が伝わってくる。

おそらくは……ダンジョンの崩壊の足音だ。

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