第1話

上空から探索者が降り立ってくる。


全員が各国の選りすぐりの探索者たちだ。SS級以上か、あるいはS級でも特に戦闘力が高い者がダンジョン内部への突入部隊に選ばれている。


「……大体揃っているな?作戦通り、ペアになってそれぞれダンジョンに潜れ。では進行、開始せよ!」

「了解!」


威勢のいい返事が飛ぶ。俺たちはそれを聞くや否や、真っ先に中へと進む。


内部は迷路状になっていて、ほとんど勘で進むしかない状況だ。


「……シュライエット」

「……うん。見えてるよ。破壊するね」


本来はダンジョンの壁は破壊不能だ。探索者のスキルも、ダンジョンの法則に従っているためそれを覆すことはできない。


ただし……権能ならば、話は異なる。


「『プリムスの瞳』起動……行くよ」


ズッ……と鈍い爆発音がして俺の目の前の空間がごっそり抉り取られる。

プリムスの瞳の力の全容は未だ明らかになっていないが、その一つに空間を飛び越えて、技をほぼ必中にするというものがある。


それを応用した、シュライエットの攻撃だ。


「流石だ、シュライエット。澄火、進むぞ……多分、あそこだ」


迷宮全体がシュライエットの攻撃によって吹き飛ぶび、迷宮の出口が露出している。俺は羽を広げ、そこを目掛けて跳躍する。


「…………」


と、通路に入るや否や黒服の男たちに奇襲される。


「……そんな攻撃が俺に届くとでも?」


閃撃を発動する必要すらない。

俺は『炎刀』の能力の一つ、絶界を使用して黒服たちの体を一瞬で切り刻む。


足止めにすらならない奴らを相手することに、少し俺は苛立つ。それをぶつけるように、俺は通路に飛ぶ斬撃をいくつも放つ。


すると、透明になって隠れていたのか、あちこちで血飛沫が上がった。


「……ん。若くん、少し落ち着く」

「……ああ」


俺は短く返答をし、そのまま通路の奥へと進む。


と、見覚えのある、ひょろひょろとしたオッドアイの男が俺たちの前の立ち塞がる。

手には指輪をたくさんつけていて、周囲に様々な魔法を浮かべている。


「……また会ったな」

「……ああ」


俺は炎刀を召喚する。

と、横から紫の電光が飛ぶ。


不意打ち気味の電撃に、オッドアイの男はばたりと倒れ伏した。


「……フェイントか」


しかし俺の足元が急に隆起し、さらに炎が色んな所から噴き出してくる。


「……流石に引っかからないか」


オッドアイの男は起き上がり、俺に攻撃を仕掛けてくる。


「……面倒臭い。権能『怠惰』発動」


そう言って澄火は男に極めて自然な足取りで近づき、その額に触れる。何だか、男の認識外に澄火がいるようだった。


「あなたはもう何もする必要がない」


男はそれを聞いた瞬間、その場に崩れ落ちる。


既に絶命していることが、強化された俺の感覚が伝えてくるオッドアイの男のバイタルサインからわかった。


おそらく、『怠惰』によって生きる意欲を失ってしまったのだろう。


「……ん。先を急ごう」

「ああ」


俺は男の遺体をそこに放置して、通路を先へ進む。







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