第6話

「ギュアアアアア!」


恐ろしい声でドラゴンが吠える。

あまりの声量に、探索者たちが身を竦まさせた。


「……マズイな」


俺は二刀を構えたまま、ドラゴンへと飛び乗り、少女と対峙する。


「……お前は……一体何者だ?」

「私はこのダンジョンのダンジョンマスター。そういうあなたは?」


俺の英語の質問に、少女も英語で答える。


「俺は日本の探索者、若槻翔だ」

「そう。日本の……いつか行ってみたかったけれど」


と、俺の頭上から誰かが降ってきて、ダンジョンマスターを名乗る少女に槌を振り下ろす。


少女は後ろにステップしてそれを避けて、ドラゴンをくるりと回転させて俺たちを振り落とそうとする。



俺はニャルトラ・ステップで空間を固めて、ドラゴンの背中の位置を維持する。


先ほど降ってきた、ハンサムな金髪の探索者も、槌を駆使して振り落とされないようにしていた。


「……悪いな、お前はもう用済みなんだ」

「……用済み、ね。なら最後に、この魔境ににいる子たちを全員殺してあげようかしら?」


そういう時と少女はパチリと指を鳴らす。


ダンジョンの奥から、さっき俺が倒した剣を持つモンスターと同種の個体、そして明らかに上位個体だと思われる個体が次々と湧き出してくる。


「……貴様!」


金髪の男は槌を以て少女を潰そうとするが、それより早く俺は加速装置・制限解除インフィニットアクセルを発動させ、少女を地上に連れ去る。


「……君はこれを止められないのか?」

「……止められないわ。ダンジョンマスターとは言っても、ダンジョンの全てをコントロールできるわけではないの」

「そうか」


強力な探索者が多くいるし、戦線の方はぶっちゃけどうにかなりそうである。

問題は、この少女をどう処遇すべきかという話だ。


おそらくアメリカダンジョン探索者協会に引き渡すのはまずい。先ほど「用済みだ」みたいなことを金髪の男が言っていた。


「……日本に来る気はあるか?」

「……私を保護しようとでも?同情ならいらないわ」

「いや。君は俺の戦利品だ。もちろん俺の役に立ってもらう」

「……ふーん。貞操は差し出さないわよ」


そういう意味じゃない。

俺は少し相手するのが面倒くさくなったので、少女の額にそっと触れて「リスポーン」のマークを付与する。


「––––絶界」


そして、少女を一瞬で消し飛ばし、事前に用意しておいた日本ダンジョン探索者協会の建物内の牢獄に送った。


熊川さんに連絡しておけば、完了という次第だ。


「……俺も参戦するか」


俺はそうひとりごちて、周囲に領域を顕現させ戦場に飛び込んだ。

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