第5話
『天輪』の説明書には、「装備者の周囲の任意の空間に、装備者の意識、もしくは自動選択により対象物の通過/非通過を切り替え可能な領域を出現させることが可能」という長ったらしい文章が書かれていた。
通過/非通過を切り替え可能……
俺はこの文をバリアを生成するものだと解釈していた。
しかしその実、この“領域”というのは正しく領域であり、内側のすべての事象をコントロールできる性質のものだということが、澄火との実験によって判明している。
「行くぞ」
俺は地面を蹴り、モンスターの背後へと飛ぶ。
「Nul……」
「黙っとけ」
領域を使用して、俺はモンスターの叫び声を強制的に遮断する。
単なるバリアではなく、領域の生成するのは難易度は高く、さらにMPの消費も凄まじい。
しかし、その効果は抜群で、俺の集中を乱す叫び声は全く聞こえなくなった。
「
俺は周囲のベクトルを操作し、自身を加速させる。
ユニークスキル『超回復』によるMPの回復があるとはいえ、流石に消耗の方がかなり大きい。
領域は保って100秒といったところか。
それまでに……片をつける!
「はあああ!」
俺はカウンターを放つ隙さえ与えない、猛烈なラッシュを放つ。
モンスターは再生し続けるが、それを超えるスピードでダメージをひたすらに与え続ける。
そして、頃合いを見計らい、一気にトドメを刺しにかかる。
––––絶界・夢幻
領域内の物質を操作し、幾つもの角度からモンスターのいる空間を多方向から薙ぎ払う。
加えて、炎刀と氷刀を以て大量の斬撃を喰らわせる。
そして、モンスターはその体を四散させ、その欠片さえもが細切れにされ空気に溶けていった。
「……ん。領域、強い」
「ああ」
消耗があまりにも激しいのが欠点だが、これからの戦闘において、俺の切り札となりうる技だ。
「状況は?」
「……ん。アメリカの探索者が、ダンジョンの中の攻略を急ピッチで進めてる……中で何が起こってるかは知らない」
「そうか」
地上部分は、かなり制圧が進んでいる。
アメリカダンジョン探索者協会の威信をかけて歩められた探索者たちが、俺が倒したモンスターと同種の個体をすでに何体も討伐しているようだ。
と、澄火とそんな話をしていると、ダンジョンの入り口から爆発したように土が吹き出し、大きなドラゴンと、それに乗る1人の人影が飛び出してきた。
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