第3話

シュライエットは眼帯を取り去る。

するとその奥から、金色に輝く瞳が現れた。


プリムスの瞳……シュライエットの新しい力だ。


「いくよ……太陽の祈り」


金色の輝きが一層強くなる。

そして、魔境の全ての範囲を焼き尽くすような、そんな爆発が地上に顕現した。


先ほどの爆撃機による爆発が遊びに見えるほどの、洒落にならないほどの爆発。


それが全てを焼き尽くした。


「全員、行くぞ!」


呆然と目の前の光景を見ている探索者を、俺はそう言って鼓舞し、魔境内部へと突入する。目指すはダンジョン周辺の安全確保だ。


「おう!」

「行くぞ!」

「やってやらあ!」


めいめいに(言語もバラバラに)探索者たちが威勢のいい声をあげて突撃していく。


「……ふう。旦那様、こんなところでいい?」

「ああ。十分だ。流石だ、シュライエット」


俺は耳元でそう囁き、二刀を構える。


「援護を頼む。アム・レアー起動……澄火、行くぞ」

「……ん!」


俺も探索者の後ろから魔境内部へと突っ込む。

外から見ている以上に、モンスターの密度が濃い。間合いをとることすらできず、近接攻撃を喰らわない方が難しいぐらいだ。


「……だが」


俺の方が速いし、俺の直感を潜り抜けられるようなモンスターなど存在しない。


モンスターを斬り、撃ち、俺たちは進んでいく。


「Come Here!」


こっちだ!と叫ぶのは、アメリカの探索者。どうやら魔境の中心となっているダンジョンの付近に前哨基地を作ろうとしているようだ。


しかし、モンスターのあまりの猛攻に、ここまで来るだけの実力を持つ探索者でもだいぶキツそうだ。


「……ぐあああ!」


1人、また1人と櫛の歯が欠けるように斃れていく。一度なら死んでも大丈夫だとはいえ、死ぬというのは恐怖をもたらす体験だろう。


「……澄火!」

「……ん」


俺は天輪を起動して、前哨基地を中心に遠距離攻撃を防ぐバリアを貼る。

ユニークスキル『超回復』によるMPの回復があるとはいえ、あまりMPを吸われては動きづらくなるため、あえて弱めに作ってある。


そして、本命である宿命の領域フェイタル・テリトリーを駆使した澄火の紫電の柵が展開される。


「……意味があるかは微妙だけど」

「多分あるだろ。もし無理そうだったら……あれを使うだけだ」

「……ん。みんなで考えたもんね」

「…………」


あの詠唱をやらされるのか……確かにみんなノリノリだったが。


「……と。話してる場合ではなさそうだな」

「……ん」


どうやら第一陣がダンジョンに入ったようだ。それと時を同じくして、剣を持った人型のモンスターがこちらに歩いてきている。


感じる気配は、『天使』を彷彿とさせるような、強者の気配だ。


「俺が相手をする。澄火は周りを何とかしてくれ」

「……ん。了解」


俺は油断なく構え、剣を持ったモンスターに仕掛ける。



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