第2話

二週間後。


いよいよ、魔境“Tears”の攻略作戦である。

……とは言っても、俺たち日本の探索者の出番は何もないかもしれない。


世界最強であるアメリカ軍と、そしてアメリカダンジョン探索者協会の猛者たちが主な戦闘を務めるからだ。


「……作戦はまず、我がアメリカ空軍の爆撃から開始する!諸君らにはその援護を頼みたい。作戦開始は1030。諸君の検討を祈る」


作戦総司令官からそう通信入る。

1030まではあと5分ほど。探索者たちは事前に知って渡された作戦書に従って、めいめいに持ち場につく。


前回の作戦では作戦はあまり詳細には伝えられず、割と現場判断と臨機応変な麻奈さんの指示によって作戦が進められていたが……この辺りは作戦総司令官の思想によるものか。


予定通り5分後、空を30機もの爆撃機が魔境の領域へと侵入した。


「……ファイア!」


猛烈な数の焼夷弾や爆弾が降り注ぐ。

モンスターにもダメージを与えられるように、物を製作する系統の能力を持った探索者によって製造された特殊な弾が使われているためか、効果はそこそこありそうで、モンスターたちは次々に火に撒かれ、あるいは体を一部を吹き飛ばされれていく。


俺は過去の世界で起きた大戦を想起して少し薄寒くなったが、冷静に目の前の状況を見るように努める。


モンスターには確かにダメージが入ってはいるが、あまり致命的なものではなさそうだ。


さすが魔境のモンスターというべきか、通常のモンスターで持っているものはそれこそダンジョンの100層以降––––深層でしか持っていな様な、再生能力を標準搭載しているようで、次々に傷が回復していく。


再生をもさせない超ダメージを与えるか、あるいは再生するスピードを超えるダメージを持続的に与え続けるか……あるいは、再生不能にする何らかのスキルを使うか。


方法はともかくとして、何らかの対処をしないとモンスターを減らすことさえ無理そうだが……


「……探索者の諸君、爆撃機が去り次第攻撃に移ってくれ」


どうやら爆撃機で戦果を上げるのは諦めたようで、作戦総司令官はそんな通信を送ってくる。


なんとなく、軍の面子とかあれこれとかによって無理やり捩じ込まれた爆撃なんだろうな、ということが推測できる。

それを察してか、周囲の探索者には白けたムードが漂う。


このままだと、士気の低さによって死者が出そうだ。


ここは一つ、派手な一撃を決めて、探索者たちを鼓舞する必要があるだろう。


その一撃を決めるのは……


「出番だぞ」

「ふふふ。任せて、旦那様」


シュラエットはそう言うと好戦的な笑みを浮かべる。そして、赤い眼帯に手をかける。


……解放」

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