第13話

迷路のような通路を抜け、俺たちはようやく一つの部屋へ到着した。


「……来たか」

「……『忘剣』!」


部屋には忘剣をはじめとした多数の“解放者”のメンバーがいた。

ほとんどが有象無象だが、中には『忘剣』のように手練れの探索者もいる。


そして、それらの探索者に守られるようにして

俺は炎刀を召喚し、抜刀術の構えを取る。


「……悪いが、お前の相手は俺ではない」

「この私だ!」


頭上から何者かが降ってくる。


「ぬうん!」


その人物は拳を地面に叩きつけ、周囲に粉塵を撒き散らす。

反撃を加えることもできたが、俺たちは警戒して下がった。


「……む?避けられたか。こいつらとは一味違うようだな?」


そういうと、何かボールのようなものをこちらへ放ってくる。

一瞬、脳がそれを認識するのを拒否した。それほどまでに、おぞましいものだった。


「分断して各個撃破……戦術の基本だろう?」


かなりの腕利きという話だったが……“解放者”の戦力が、俺たちの予想を遥かに上回っていたというわけか。

俺はそれらを拾い上げて、腕輪へと収納する。


「……若くん、このままだと少し分が悪い」

「いや、問題ない。どうやらこいつらは、とてもみたいだからな」


愛憎という言葉が示す通り、憎しみは愛情の裏返し……もしくは対極に位置する概念である。

であれば、我が権能『色欲』の領分である。


「権能発動『色欲』」


周囲の法則を全て捻じ曲げて、自身に都合のいい現象を発生させる、ある一定の法則に従って作用するスキルとは似て非なる力……権能。


俺は権能を以て、世界に命ずる。


無償の身勝手な


どくん。


世界が鼓動するような音が響き、俺の下に解放者への憎悪と、そしてそれに付随する数多の負の感情が集まってくる。


恨憎怨辛悲哀怒恐憂悩苦鬱憤……


吐き気を催すようなそれらの負の感情に耐えながら、俺はもう一つの力を解放する。


––––スキル発動『能力奪取』


ユニークスキル『能力奪取』の『追加効果・スキル奪取』の発動条件は俺が強い感情を持つこと……今、それは成った。


俺の手にどこか悍ましさを感じさせる、漆黒のエネルギーが生成されていく。


相手は警戒体制を取るが、もう遅い。


「……はああ!」


漆黒のエネルギーで構成されたモヤはどんどんと膨張していき、ある閾値を超えたところで爆発を起こす。そして、部屋の全てを黒いモヤで満たした。

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