第10話

海外の探索者組が大きな穴に飛び込んだのを見届けて、俺たち日本の探索者組––––『不吉』、『円環』、『天翔』、『紫電』の四人––––は認識阻害のかかっていた扉の前へと移動する。


「……開かねえな」

「私に任せたまえ」


『円環』はそういうと、扉に手を当てる。

一瞬の後、ガチャリという音がして扉が開いた。


「すげえな。中は……」

「……どうやらここにも穴があるようだな」


扉の奥には、小さな小部屋がある。ただし、床がなく、代わりに下へと続く穴がぽっかりと開いている。


「待っていても仕方がない。飛び込もう」

「では俺が先行する。ついてこい」


そういうと『不吉』はひらりと身を踊らせる。『円環』もその後に続いた。


「俺たちも行くか」

「……ん」


俺と澄火は同時に穴へと飛び降りる。ステータス能力によって感覚が強化されているため、この程度の闇ならば見通すことができる。


『不吉』は重力の能力を持っているためか、明らかに物理法則から外れた異常なスピードで落下していく。

時々バキバキと何かを破砕するような音が聞こえるのは、罠を壊しているからだと思われる。


俺は“天輪”によるバリアを展開して、ステータス画面を開いてみる。


どうやらここはダンジョンの内部という判定らしく、無事に開くことができた。


若槻 翔

レベル301

HP 13271/13271

MP 27193/27193


SP 0

筋力 15261

魔力 16182

敏捷 15178

耐久 16182

器用 15181


ステータスは大きく上昇している。

『炎刀』からユニークスキルを奪取した影響でステータスが下がっていたはずなので、魔境の戦闘でかなり吸収したということか。


俺はステータス画面をフリックして、スキル一覧に切り替える。


権能

色欲

ユニークスキル

能力奪取II

炎刀・氷刀Ⅶ

スキル

スキル容量無限化


俺は順にタップして詳細を開いていく。


能力奪取II

敵を倒した場合、または敵を倒すのに貢献した場合、敵の強さ等に応じてステータスの一部を恒久的に奪い取る。

ただし、スキルポイントは全てステータスに変換され、またスキルの習得が不可能になる

追加能力・スキル奪取

自身のステータスと引き換えに、対象のスキルを奪い取る。対価となるステータスの量は、スキルの強さに比例する。発動には、強い感情が必要。



俺のユニークスキル『能力奪取』のレベルが上がり、新たな能力が追加された。

強い感情が必要……つまり、憎しみや哀しみ、そういった感情が必要になるということだ。



炎刀・氷刀Ⅵ

炎の力を持つ刀と、氷の刀を持つ刀を生成する。

追加能力・飛斬

斬撃を飛ばすことが可能となる。

追加能力・氷炎

氷の力と炎の力を操ることができる。

追加能力・飛翔

空を自由に飛ぶことができる。

追加能力・絶界

炎の斬撃と氷の斬撃を自由自在に生み出す。

追加能力・融合

炎刀と氷刀を融合し、新たな刀を生み出す。


『能力奪取』によって奪ったスキルはレベルも引き継がれるようで、『氷刀・炎刀』のスキルレベルは何と6だ。

おそらく、使い込めば使い込むほどスキルレベルが上がっていくタイプなのだろう。



スキル容量無限化

所有者のスキルの容量が無限となる。



簡潔な一文だ。


スキルを奪った時、猛烈な苦しみに襲われたが……それはおそらく、1人が持てるスキルには上限があり、その上限を超えてしまうと死ぬのだろう。


それを解決してくれたのが、このスキルというわけだ。


ひょっとしたら、このスキル容量の上限によって、探索者能力を持つか、あるいは持たないかが決まるのかもしれない。


俺はステータス画面を閉じて、下の方を見る。

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