第8話

魔境とは何か?


一般的には、ダンジョン災害の鎮圧に失敗した結果、地上の支配権を喪失した地域だと理解される。

しかし、それは事実とは異なる。魔境とは、「ダンジョンマスター」がいるダンジョンの地上部分を指すのだ。


ダンジョンマスターとは、ダンジョンの支配権を手に入れた人間のことを指す。


通常のモンスターは、ダンジョンの地下部分からは一定時間しか出ていることはできない。

例えダンジョンの領域が広がり、モンスターが地上から出現するようになったとしてもそのルールは変わらない。


しかし、ダンジョンマスターがダンジョンのルールを変更した場合は、モンスターが地上でもその体を維持することが可能になるのだ。




一枚目を要約するとこんな感じだ。


ダンジョンマスター……そんな存在が居たとは。確かに、それなら今まで協会が黒子ビハインドザシーンや解放者の本拠地を特定できなかったのも頷ける。


そもそも黒子ビハインドザシーンや解放者は、ダンジョンマスターを中心に様々な能力者が集まって創られた組織なのだろう。


俺はペラリとページを捲り、二枚目以降に目を通す。


二枚目以降には、それぞれのダンジョンの詳細が書かれていた。


“Hope”

場所:オーストラリア

超古代文明の研究所がある。研究所には今は誰もいないが、自立システムがダンジョンマスターとなってダンジョンが運営されている。プロジェクト:####のピース5が保管されている可能性が高い。


“Ruin”

黒子ビハインドザシーン』の本拠地があると考えられる。そもそも黒子ビハインドザシーンはダンジョンマスターを基軸としてできた組織であるとの情報もある。



俺の先ほどの予想を裏付けるような記述だ。



“龍宮”

場所:小笠原諸島

『解放者』の本拠地があると考えられる。


“Tear”

場所:アメリアのネブラスカ州

『涙の征服者』という組織の本拠地があると考えられる。組織の詳細に関しては不明。


“Origin”

場所:アフリカ、コンゴ


「……?」


なぜか、Originのところだけ黒塗りにされている。光に透かしてみるも、筆跡すらない。


何も分からなかったので書かなかった……というよりは、いったん何かが書かれてからすべて消されたようだ。

黒塗りの部分は、これまでのダンジョンの記述全てを合わせたよりも多い。

そのことから見ても、“Origin”に特に重要なものがあることは間違いなさそうだ。


それが一体何かは、全くの不明だが……おそらくは、この黄金の短剣と関係があるはずだ。


いずれにせよ、俺は魔境を少なくとも二つ……アーティファクトがあるHope、そして何かがあるであろうOriginを攻略しなくてはならない。

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