第6話

キュリキュリキュリという音を立てて、アーティファクトが空中に生成されていく。


まず、見るからに原動機だとわかるものが生成されていく。

科学技術によって作られたエンジンはかなり複雑な構造をしているはずだが、今生成されているエンジンは不自然なほどにすっきりとした造形をしている。


そしてそのエンジンを覆うように、今度は外殻が形成されていく。流線型の美しいデザインだ。


「……ん?」


そして、最後にアーティファクトをすっぽりと収めるような大きなハートマークがピンクのラインで描かれ、アーティファクトの出現が終わった。


……エルの遊び心だろうか?


俺は頭にハテナマークがまた一つ浮かんだが、ともかく俺はアーティファクトに手を伸ばす。

手を触れた瞬間、アーティファクトは俺の背中に収まった。どうやら、バックパックのような使い方をするようだ。


MPを通すと、頭の中に説明書が浮かんでくる。



プロジェクト:#### ピース4/5

バックパック型個人用兵器。飛行能力を付与する。

この説明書は、最初にMPを消費した時に装備者の知的領域にインプットされ、その後これを想起することで閲覧者の知的領域内で溶けて消える。

以上



“飛行能力を付与する”としか、説明書には書いていなかった。試しにMPを送ってみると、ふわりと体が浮かぶ。

感覚的に、かなりのスピードで空中を動くことも可能そうだ。


……ただ、役割がいまいちニャルトラ・ステップと被ってしまっている。


アム・レアーが周囲の状態を把握する感知能力を持っていたり、ニャルトラ・ステップの空間固着機能がかなり柔軟に使えたりと、アーティファクトには説明書に書かれていない機能……言うなれば、カタログ外スペックが多々ある。

名前を付けるのは、ピース5までが揃ってからでも良さそうだ。


俺はひとまず着地して、ピース4を虚空へと収納して、部屋を出る。


そして、隣の部屋のドアを開けた。


「…………ローズさん!?」


その部屋にあったのは、ローズさん……いや、ローズさんの外見をしたロボットだった。


「……まさか」


そういえば、ローズさんが話している言葉を聞いたことがない。もしや、ローズさんはエルの技術によって作られたメイド型アンドロイド人型ロボットだったのか?


今はローズさんは専用のドックの中で沈黙している。観察した感じ、どうやら俺には起動できなさそうだ。


「……次へ行くか」

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