第5話

俺は戦闘服に着替え、かつて叡智の墓があった場所へ赴く。


エルが何かを隠したのだとすれば……そして、それを俺に託したのだとすれば、その鍵はエルが製作に関与したこの戦闘服の可能性が高い。

そう考えたからだ。地面に座り、地面に手を当てる。……しかし、特に何も起きなかった。


「……ふむ」


どうやら、鍵は戦闘服ではなかったようだ。俺は首を傾げて腕輪に入っているもののリストを空中に表示する。


種々の武器やアクセサリー、魔石、ポーションもなどが大量に入っている。ドロップアイテムを拾ったまま整理していないからだ。

スクロールしていくと、俺は一つのアイテムに目が留まった。


エルに勧められ、オークションで十五億八千万円という大金を使って落札した品。三本の鍵だ。

そのうちの一本は中国のダンジョンで使用してしまったが……二本は残っている。


俺は鍵を腕輪から取り出す。すると、ぽわ……と鍵の一つが淡く輝いた。そして、それに反応したかのように、地面の一部が光り輝く。


「……なるほど」


鍵をリングから取り外し、俺は地面の一部のようにしか見えないそこに、鍵を差し込む。


ぶうん。


そんな音が響き、ブルーグリーンの幾何学模様が地面に走る。

そして、綺麗な新円の穴が地面に開いた。大体、ひとが1人通れるくらいのサイズだ。


躊躇なく中に飛び込むと、カシャリと穴が閉まる。そばにボタンがあるので、これを押せば開くようになっているのだろう。


中は通路になっていて、扉が四つある。


俺は手前から改めていくことにして、扉に手をかける、しかし、一番手前の扉は開かなかった。

鍵も反応しないため、おそらく俺には開くことができなさそうだ。


出鼻をくじかれた俺は、気を取り直して次の扉に手をかける。

中には、5本指の手形が表示されたディスプレイが鎮座していた。


「……羅針盤が反応していたのは、これか?……いや、だがしかし……なぜこれがここに?」


何故、エルが造ったこの空間に、プロジェクト:####のアーティファクト生成機が?


考えてもわからない。分かりそうもない。


俺は思考を止めて、ひとまずディスプレイに手を置く。


……起動に足るMPを確認

……起動しますか?

……「はい」「いいえ」


見慣れたメッセージが表示される、「はい」を押すと、これまた見慣れた次のメッセージが表示された。


……エネルギー充填完了。

……装備者:若槻翔、解析データの読み込み完了。

……プロジェクト:####ピース4を起動しますか?

……「はい」「いいえ」


「はい」を選択すると、アーティファクトの生成が始まった。

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