第6話

これで、チェックメイトだ。感覚的に、ステータスの三割ほどが失われたが……それを補って余りあるだけの力がユニークスキルにある。


「––––炎よ、氷よ」


呪詞を唱え、エネルギーをこめると、炎と氷の力が強まっていく。


名前は……そうだな、炎の刀の方をラム・フラム、氷の刀の方をアレート・ロー、と名付けることにしようか。


「……死ね」


俺は先ほど『炎刀』がやっていたように、飛ぶ斬撃を連続で放つ。


能力を得て、そして使ってみて分かったが、飛ぶ斬撃には二種類ある。すなわち、炎の斬撃と氷の斬撃だ。

炎の方は、焼き切ることによって斬撃を実現させている。

対して氷の方は、指定した地点に超極薄かつ超低音の氷を発生させ、物理的に切断する攻撃だ。

感覚的には、同じユニークスキルか、あるいはそれに類する魔法やアイテムでないと打ち消せないだろう。

現代科学では、どうあっても防ぐ手段を講ずることはできないはずだ。


『炎刀』は本能によってか、あるいは経験によってか、ほとんど見えないはずの斬撃を、あるものは避け、あるものは致命傷にならない位置でくらいつつダメージを抑える。


威力が低いので、十分な傷を与えるには至らないが、俺のMP総量的に、このままこれを続ければ先に力尽きるのは相手の方である。


「……くっ」


このままでは勝機がないと見て、意を決した『炎刀』が拳を構えてこちらに飛び込んでくるが、それは自分が持っていた力を甘く見過ぎである。


俺は左手の刀で何回か正面を斬り、氷の斬撃で埋め尽くされた空間を出現させる。


すぐに回避できる程度の障害だが、しかし少し足止めすることはできる。


俺が持っていた紅刀、蒼刀とは違い、俺と深く結びつくユニークスキルなので、炎の扱いの自由さも大きく上がっている。


それを生かして、俺は足元から炎を生み出し、普段の加速装置・制限解除インフィニットアクセルに速度を上乗せする。


そうして放った突き攻撃が、あっさりと『炎刀』の胸を貫いた。


膨大なステータスが、『炎刀』から俺へと流れる。能力奪取の力が強化されたからか、ステータスの奪い取れる量も心なしか上がったような気がする。


俺は『炎刀』の体をバラバラに切断し、刀を納めた。


皮肉さのかけらもなく煌々と輝く太陽の光が降り注ぐ中、海に何かが落ちるような音が響いて、そして余韻も残さずに消えた。

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