第4話

自身の速度と、空中にいるという環境を活かして、四方八方から二刀で攻撃をしていく。


空中で跳び回る俺に飛ぶ斬撃を当てることは不可能に近いし、例え当たったとしても『天輪』により弾くことができる。


––––もっと……もっと疾く!


聖痕エニグマの分、自身の耐久のステータスを超えたスピードで動いているから、体から軋むような音が聞こえてくる。


反動が来るかもしれないが、今はそれを気にしている場合ではない。


『炎刀』は卓越した技術のもと、二刀を駆使して俺の斬撃を迎撃していく。


「はあっ!」



そして、俺が二刀をクロスして斬りつけたタイミングで、気迫と共に同じようにクロスして俺の攻撃を受け止める。


俺と『炎刀』の武器が、互いの全力で以ってぶつかった結果……俺の二刀が、真っ二つに切り裂かれた。


そこそこ性能のいいダンジョンドロップと、ユニークスキルの生成物。

武器に恐ろしい負荷がかかる高ステータス同士の戦闘において、武器の性能差が現れた形だ。


天輪を生かしてなんとか後方に逃れるも、『炎刀』は追撃をかけてくる。このチャンスに、勝負を決め切るつもりだろう。


「アム・レアー!」


俺はアーティファクトを起動して、射撃によってなんとか勝機を見出そうとする。


刀が真っ二つになってしまった以上、間合いでも技の威力でも、現状では負けてしまっている。

先ほどからエネルギーを込めているが、刀は全く反応しない。


どうやら、完全に機能が破壊されてしまったようだ。


––––このままだと負ける。


俺の直感が、理性さえもが、そう告げてくる。


負けてはならない。負けるわけにはいかない。そう思ってはいても、現実は変わらない。


そこで、俺はこの戦いで全く使っていない力が自分にあることに気づいた。


『色欲』の権能だ。結局、この権能がどんな力を持っているかはわかっていない。

組織『大罪』の一員である『暴食』と遭遇した時は、彼は今の俺でも対抗するのが難しいと思われるほどの力を所持していた。


『色欲』が七大罪の一つである以上、同じだけの力を持っていてもおかしくはないはずだ。


––––『色欲』の権能よ、俺に力を!


俺は心の内でそう叫び、自分の中にある力を引き出そうとする。


………………どくん。


俺の求めに応じたのは、しかし『色欲』の権能ではなく、俺の根源たる力ユニークスキルだった。

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