第1話 結界

俺は即時に澄火の元にワープする。


場所がマンション『StarElements』であることを確認して、俺は窓を開けて外へ飛び出す。


本来はステータス能力を外で使うことは禁止されているが、そんなことを気にしている場合ではない……ような予感がする。


「若くん!」


澄火は追いかけようとして踏みとどまった気配がする。いかに澄火といえども、俺の本気のスピードについては来られない。


音速を遥かに超えるスピードで、エルの島を目指す。


高高度にいるにも関わらず、俺の真下の海面が割れている。空気抵抗をあまり消せていないことによる影響だ。


ワープできない理由として考えられるのは二つ。エルが拒否しているか、あるいは何かに妨害されているかだ。


エルの島の半径30kmに到達した時点で、何かパリッとした感覚が走る。俺は直感的に、それがワープを弾いていた物だと言うことが分かった。


刀を抜いて警戒体制になった俺に、八人の見知らぬ黒服が襲いかかってくる。


俺は全ての攻撃を捌くことができず、弾き飛ばされる。またパリッという感覚が走る。どうやら、結界はエルの島半径30kmほどに張られているようだ。


一瞬とはいえ、高速移動する俺の速度についてこれるとは、黒服は並大抵の相手ではなさそうだ。


––––閃撃・百花繚乱


加速装置・制限解除インフィニットアクセルを発動し、追撃をかけようとする八人それぞれの背後に飛んで抜刀術を繰り出す。


しかし、全員に防がれてしまった。


黒子ビハインドザシーンか?」

「答える必要はない。お前か、俺たちのどちらかは確実に死ぬのだから」

「……ん。そんなことはない」


と、しゅぱっと俺のそばに澄火が現れる。


「旦那様、ここは私たちに任せて、先へ急いで」


続いて、戦闘服に身を包んだシュライエットも現れた。かつて所属していた組織員に、黒服たちが厳しい目を向ける。


「裏切り者……バクか」

「だからどうしたのかな?」


シュライエットがそういって不敵な笑みを浮かべる。しかし、俺には彼女が恐怖と不安を隠していることがわかった。


「……ん。早く」


澄火はそういって体に紫電を纏わせる。


「……助かる」


澄火が紫電で俺の周囲にバリアを貼る。合わせるように俺は『天輪』でバリアを展開して、黒服の間をすり抜ける。


––––エル。エル。俺の愛しいエル……どうか無事でいてくれ。


そう願う俺が目にしたのは––––戦闘によってズタズタに破壊された島の施設、仮面の女、そして……


エルの死体だった。

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