第二章 転

プロローグ

『龍宮』のダンジョン災害が起こってから早一週間が経った。


ダンジョン災害が起こった時点で東京で大規模な避難が行われていたため、事態を隠しておくことはできず、世間では今は『龍宮』の話題で持ちきりである。


ダンジョン災害が起こった責任が云々、龍宮が近くにあることの危機意識が云々、そんな無責任な議論が日夜起こっている。


それと共に話題となっているのが、パーティ“Colors”と、そしてエルヴィーラ王女の活躍である。


どうやら内部の人間によって自衛隊が密かに撮影していた機密ビデオまで流出してしまったらしい。

また、俺がCODE:Lを発動してぶっ放したビームと、そしてそれによって起こった破壊が衛星写真でも捉えられていたらしく、それも合わせて流出している。


麻奈さんいわく、すでに犯人は特定され、処されたそうだ。


とは言え、一度流出したものを回収するのはかなり難しく、また破壊の様子もかなり印象的なものなので、連日のようにテレビで放映される映像と化している。


派手な戦闘シーンが続くため、視聴率が結構とれるらしい。


ちなみに、俺は一度見てもう二度と見ないと心に決めた。


どんな技術を使ったのか、「『天翔』の二つ名の所以、見せてくれようか」などと言い放つ俺の映像があったのだ。


また、俺と澄火の高校時代の写真が流出し(犯人は結構多くいそうだ)、個人情報なんかも特に気のすることなく報道されている。

取材の依頼が結構きているが、こちらは探索が忙しいということで全てカットしている。


俺たちの住居は探索者協会によって厳重に秘匿されているため、情報が漏れる心配は殆どない。そのため、マスコミが押し寄せてくる心配もほとんどなく、俺たちは割と平穏な日々を過ごしている。


エルヴィーラも、その美しい容姿と、そして強力な能力からマスコミの注目の的となっている。


口が軽い探索者の一部と、そして自衛隊の関係者とやらから情報が漏れたらしい。


エルヴィーラ王女が公務を行った際の写真から、『美しすぎる王女』、『戦うプリンセス』……などと言われ、これまた連日テレビで放映されている。

流石に、王女としての立場からマスコミに圧力をかけるような真似はできないらしい。玲奈も、こうなってしまっては手をつけようがないといっていた。


「今日はここまでにするか?」

「……ん。若くんはエルのところに行っていいよ。私はシュライエットのところに帰るから」


ちょっと口を尖らせて左手の薬指に嵌る指輪に触れる澄火。

確か、シュライエットは今日は俺たちの家の一室で作業しているんだったか。


俺は澄火がシュライエットの元にワープするのを見届けてから、エルの元にワープするべく指輪に意識を集中させる。


しかし、なぜか指輪の能力は発動しなかった。

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