第11話

救援を要請したのか、空に次から次へと船が現れる。先ほどの船とは少し形の違う船だ。


今出現した船は、なんとなく役割が戦闘に寄っている気がする。


俺は腕輪から、邪勇者から手に入れた刀……『ムラクモ』を取り出す。


俺たちのようなS級探索者が幾人も集まってようやく討伐できるレベルの強力な自律型アーティファクトが日本本土に押し寄せようとしている……この状況は、すでに“日本の危機”だ。


つまり……『ムラクモ』の抜刀条件が満たさているはずだ。


果たして、ムラクモの鞘から刀が引き抜かれ、玉虫色の刀身が露となった。


無限とも思えるエネルギーがムラクモから刀を持つ俺に流れ、全ての能力を強化してくれる。


「『天翔』の二つ名の所以、見せてくれようか」


心地よい全能感と共に俺はそう宣言し、船のそばまで一瞬で跳び、一旦ムラクモを鞘へと納める。


聖痕スティグマ発動……閃撃・終」


『天使』より授かりし力である聖痕スティグマを起動し、更なる加速を得た状態で、抜刀術を放つ。

ムラクモのエネルギーが作用したのか、抜刀術の間合いが拡張され、明らかに刀が届いていない範囲にいる船をも切断する。


本来はかなり燃費が悪い聖痕スティグマだが、ムラクモから溢れ出るエネルギーがそのデメリットをないものにしている。


と、俺は“龍宮”の方から、多数の船が近づいてきているのを発見した。


「……護衛艦“飛影”より全体へ。今6時の方向に確認された船群が龍宮より進出されし最後の船影である。幸運を祈る」

「了解」


––––“CODE:L”発動


戦闘服に組み込まれている、アーティファクトの性能を一時的に引き上げるシステムを起動する。

一度使用したらもう一度使用するまでに24時間という長いクールダウンを要するため、今まで温存してきたが、あの船群が最後なのであれば今が使用するときだろう。


俺はアム・レアー四機に、ムラクモから供給されるエネルギーと、俺のMPを全て込め、発射した。


今までとは比にならないレベルのエネルギーを孕んだビームが、遠くに見える船群を薙ぎ払う。


ビームは着弾するや否や、船の構成物質を全て蒸発させ、圧力変化による爆発を起こす。

何かに誘爆したのか、爆発が爆発を生み、凄まじい破壊が生まれてしまっている。


アニメ映画でしか見ることのできないような光景に、護衛艦に乗る自衛隊員や探索者が口をぽっかりと開けているのが見える。


破壊から逃れたわずかな船は、エルやリリアによって排除され、エル曰くアーティファクトを滅ぼした勢力のものだと言う船の出現による戦況の悪化は、なんとか回避された。

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