第10話

「アーティファクト?」

「ええ。正確には、三つのアーティファクト文明を滅ぼした勢力、その尖兵といったところでしょうか」


エルはそう言うと、ゴツい大砲のような物を構える。いつものドレス姿なので、かなりアンバランスに感じられる。


「ふふふ。行きますよ?」


エルは躊躇いもなく引き金を引いた。極彩色のレーザーが発射され、船を一息に貫いた。


「対“アンチアーティファクト”専用なので、普通のものにはあまり効果はありませんが……反面、“アンチアーティファクト”には効果抜群ですわ」


と、船がこちらに脅威を感じたのか船の中腹部から大砲を展開する。

エルの大砲は煙を上げていて、使用不能のようだ。澄火の持つ銃と同じく、一度撃ったらしばらくは撃てなそうだ。


「アム・レアー」


俺はアム・レアーに自身のMP最大値の半分のMPを込める。そして、四機のビームを収束させるようなイメージで発射した。


プロジェクト####……一体それが何なのかはわからないが、アーティファクト文明を滅ぼした勢力がいたと言うのであれば、それに対抗するために作られたのではないか。


であれば、あの船に有効な攻撃を放つだけの力はあるだろう。


「……放て」


果たして、放たれたビームは空中で収束し、一隻に着弾すると破壊を巻き起こした。


「ふふふ。私も負けてはいられませんね」


エルはそう言うと、周囲に様々なアーティファクトを展開する。


先ほどの大砲を自立型にしたようなものは、船に照準を合わせている。

謎のクリスタルのようなアーティファクトからは謎の波動が周囲に放たれる。

さらに、10の機械腕が展開して手には様々な武器が握られている。


ちらりと澄火の方を見ると、お目目をキラキラと輝かせてアーティファクトを見ている。

確かに、澄火が好きそうな、厨二心あふれるアーティファクトたちである。


「あの船をサンプルとして手に入れたいのです。協力していただけますか?」


エルはそう言うと、小さな箱のような物を取り出す。あの中に閉じ込めることができるのだろう。


「了解、エル」

「……ん」

「ふふふ。感謝ですわ。行きますわよ?」


エルは機械腕を飛ばし、船を取り囲む。


「私も手伝いましょう」


リリアの光球がいくつも出現し、そこから鎖が伸びて船を拘束する。

俺も負けじとアム・レアーを打ち込んでいく。


船が鈍重そうな見た目とは裏腹に素早く動いて回避を続けるが、その隙を見逃さず、エルが箱を飛ばす。


「……ん!」


澄火が紫電を飛ばし、その援護をする。

箱はぱっと四つに分裂すると、船を取り囲んで一瞬で消失させた。


「回収完了ですわ。みなさま、好きに暴れてくださいまし」

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