第9話 船
「噂には聞いていましたが、蒼紫霜電……凄まじい威力ですね」
シュライエットはいつのまにか、リリアのそばに移動していたようだ。
シュライエットもユニークスキル『爆発連鎖』で高速移動する術を持っていたような気がするし、それで移動したのだろう。
「ありがとうございます。状況はどんな感じで?」
「まだ大丈夫です。……ただ、『予知者』が不穏な気配を感じ取ったそうです」
「『予知者』が?」
日本には、S級以上以外にも二つ名を持っている探索者が2人いる。
1人目は、水上麻奈さんだ。麻奈さんが教えてくれない上、他の人に聞いても言葉を濁すだけで答えてくれないので理由は知らないが、『支配者』という異名を持っている。
そして2人目が、相川未愛という女性の
だ。彼女は少し先の未来を見る『予知』というユニークスキルを持っている。異名はそのユニークスキルの通り『予知者』である。
彼女は常時、日本ダンジョン探索者協会のどこかで守られていて、表に出てくることは決してない。
そもそも、存在さえ知っている人はかなり少ないだろう。
そんな彼女が、不穏な気配を感じ取ったのであれば、リリアが救援を要請したのも頷ける。
とはいえ、現状は俺たちを抜きにしても戦力が十分足りているように思える。
確かにモンスターの数は多いが、それ以上にリリアと、そして討伐したモンスターを傀儡にして操る『死帝』の殲滅力が高い。
だとしたら、『予知』が感じた不穏な気配とは一体。
「……何か来ます」
突然、リリアがそう呟く、
俺は反射的に二刀を抜き、アム・レアーを構える。
そして、空中に10隻の船が現れた。
表面が見たこともない金属––––おそらく現代技術では再現不可能––––で構成された、空飛ぶ船だ。
それらの船は円を描くように隊列を組むと、円の中心にエネルギーの球を生成する。
––––あれはマズイ。
そう見解が一致したS級以上の探索者の攻撃が、空中に浮かぶ船とエネルギーの級に集中する。
……しかし、後一歩遅かった。
エネルギーの球から全方位にビームが発出し、モンスターの群れもろとも無差別な攻撃が始まる。
「天輪!」
回避は無理だと判断し、俺は天輪で澄火とシュライエットを守るようにバリアを張る。
リリアは、下の護衛艦を守っているようだ。
「……ん。反撃する」
澄火は紫電をチャージしている。
「攻撃がおさまる気配がないな」
どこからエネルギーを調達しているのか、ビームが止む気配がない。澄火はチラリと目配せをしてくる。
俺はバリアを一方向からの攻撃のみ防ぐ設定にして、澄火の攻撃を通るようにする。
割とリスクがあるが、そこは澄火を信頼してのことだ。
どおんという反射的に身構えてしまうような轟音が響き、紫電がエネルギーの級へと命中する。
紫電はエネルギーの球にまとわりつくと、徐々にエネルギーの球を紫電へと変化させていく。
さながら、支配権を乗っ取っていっているかのようだ。
数秒後、球は爆発したように周囲に紫電のエリアを作り出す。
「……ん。なんとか止めたけど、このままだとまずい」
「どうするか」
「ふふふ。アーティファクトなら、わたくしの出番ですわ」
と、突如現れた異国のお姫様が、その美しい瞳を輝かせた。
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