第8話

そうしてモンスターの群れを殲滅して回ること一時間。


リリア率いる本隊からの救援要請を受け、戦闘地帯に向かって移動していた。


「リリアがいるんだし、救援要請なんて必要ないような気もするけどな」

「……ん。確かにリリアは強いけど、戦闘区域が広すぎて手が回ってない可能性がある」

「他の探索者は誰が派遣されてるんだ?」


俺の疑問に、現在は『支配者』の異名を持つ麻奈さんの部下として働いているシュライエットが答える。


「本隊の方に配属されてるS級以上の探索者は……パーティ『マジックユーザー』、『死帝』、『正負』、『妖狐』、『暗殺』、『月光』、『射撃』……それから『瞬剣』かな」

「空中戦が強力なメンバーが集められたのか」


どの人も会ったことがある。

全員、空中戦が得意な探索者だ。ユニークスキルを持ってるのは、『死帝』、『正負』、『射撃』……か。

『射撃』のユニークスキルは、確か大きなアンチマテリアルスナイパーライフルを出現させる物だったか。


「そんな感じだね。他の探索者は、国内のダンジョンの警戒と地上決戦の準備にあたってるよ」

「リリアが突破されるようなことはないような気もするけど」

「万が一に備えてのことだよ。敵がワープスキルを持っていたりしたらことだからね」

「……あんまり考えたくない事態だな」

「……ん」


一体どれだけの被害が出るのか、想像もつかない。


「若くん、あれが本隊かな?」

「……やばいな」


空がほとんど真っ黒に見えるほどに、モンスターが大量にいる。


「……ん。ここはあれを使うしかない」

「……だな。俺が飛び込むから、澄火は指輪で飛び込んできてくれ」

「……ん。了解」


澄火はそう言うと、両掌に意識を集中させる。俺は加速装置・制限解除インフィニットアクセルを発動し、モンスター群の中へへと飛び込む。


「氷花雪界!」


俺は蒼刀に込めたMPを解き放ち、周囲の空間を凍らせる。直後、俺の背後に澄火がワープしてくる。


「赤き怒り。青き情熱。一つとなりて、静止せし世界を再び震わす––––蒼紫霜電」


不必要かつ特に意味のない詠唱ののち、澄火が青い電撃の球と赤い電撃の球を飛ばす。


俺たちはその結果を見ずに、シュライエットの元へとワープする。


赤い電撃に球と青い電撃の球、両者は引き合い、接触すると、猛烈なエネルギーを発する。そのエネルギーの大部分は熱に変換され、そして周囲の氷を一気に気体に変化させる。


氷の体積が1700倍にまで膨れ上がり、瞬間的に恐ろしい圧力が生じ、そして弾けた。


世界の終わりを錯覚するほどの轟音が鳴り響き、爆発の周囲のモンスターを消し飛ばした。

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