第6話 太陽の祈り

「見えた」


水平線上にうっすらとモンスターの群れが見え始めた。

西洋風のドラゴンや東洋風の龍、そしてそれを取り巻く種々の飛行型モンスター。


現在、龍宮の地上にいるモンスターは、東京へ向かって北上する群れと、そして陽動のつもりなのか、オーストラリアやハワイ、フィリピンといった地域に向かって進む比較的小規模な群れとに分かれている。


前方に見えるのは、そのうち後者の方だ。


東京に向かって北上する群れの対処に当たっているのは、『天使』を含む強力な探索者たちである。


「……だね。旦那様」


俺はシュライエットを解放する。シュライエットは、ふわりと浮かび上がると、意識を前方に集中させる。


「……“太陽の祈り”」


技名だろうか、シュライエットはそう呟く。

まるで導火線のようにサッカーボール大の爆発が連鎖して行く。

そして、モンスターの群れと衝突した瞬間、一気に爆発の範囲と威力が引き上げられる。


そして、天をも貫くような轟音と共に、群れの大半が吹き飛んだ。


がしっとシュライエットがこちらにしがみついてくる。


「MP切れ」

「そうか」


どうやら、浮遊に使う分のMPまで消費してしまったらしい。計画的犯行なような気がしなくもないが、俺はお姫様抱っこしてやる。


「むう……」


澄火が自分もMP切れになれば抱っこしてもらえるかな?とでも言いたげな顔をする。

澄火がMP切れになってまで倒すような敵は存在しないと思われるので、おそらく澄火を戦場で抱っこする日は来ない。


代わりに、シュライエットのお姫様抱っこを片手に切り替え、澄火に手を差し出す。

すると、澄火はぎゅっと俺の手を握ってきた。


「旦那様。抱っこをせがんだ私が言うのもなんだけど、モンスターに対処しなくてもいいのかい?」

「大丈夫だ。


そう言うが否や、ズッ……とかすかな音を立てて、モンスターすべての首が落ちる。


なんてことはない。“太陽の祈り”が発動した直後に、加速装置・制限解除インフィニットアクセルを発動して残りのモンスターを斬っただけだ。


「流石だね、旦那様」

「シュライエットがモンスターを減らしてくれたおかげだ」

「ふふ、ありがとう」

『……こちら特殊部隊所属“万葉”。貴殿より12時の方向にモンスターの反応あり。至急対応を求める』


シュライエットと会話していると、護衛艦“万葉”からの通信が入る。事前に、耳に装着するタイプの通信機を渡されていたのだ。

地味にダンジョンから発掘されたものから作られていたりする。


「了解、向かいます」

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