第4話 魔境

「あ、帰ってきました!」

「すぐに連絡しろ!隔壁封鎖!若槻殿、星野殿、すぐに表のジープにお乗りください。緊急事態が発生です」

「……は、はあ」


地上へと帰るなり、そんなことを捲し立てられて俺たちは車へと詰め込まれた。


「一体何が……?」

「龍宮でスタンピードの発生が確認されました。現在モンスターの大群が東京へと侵攻中。探索者が戦闘中です」

「……龍宮……魔境じゃないですか」


魔境というのは、スタンピードが加速した結果、ダンジョンの地上区域の支配奪還が不可能になった地域のことである。

通常は周辺地域諸共封鎖され、探索者であろうとも不用意に近づくことはできない。


現在存在する魔境は五つ……アメリカのネブラスカ州にある“Tear”、アフリカのコンゴにある“Origin”、グリーンランドにある“Ruin”、オーストラリアにある“Hope”……そして日本の小笠原諸島にある“龍宮”である。


俺はタブレットのチャットアプリを開く。

予想通り、シュライエットからメッセージが来ていた。


バク「旦那様、チャットを見たらすぐに飛んできて欲しい。私まで駆り出されるほどの緊急事態」

翔「了解。澄火と共に、すぐに向かう」


「……悪いですが、俺らは俺らのやり方で現地に向かいます。……澄火、飛ぶぞ」

「……ん」


澄火はぎゅっと俺の手を握ってくる。

俺も同時に、左手に嵌めた指輪に意識を集中させる。

一瞬の後、俺はシュライエットのそばへとワープした。


「おかえり、旦那様、澄火。そろそろなんじゃないかと思ったよ」

「ただいま、シュライエット……ここは?」

「龍宮に向かって航行中の、護衛艦“万葉”の上だよ。ダンジョンはどうだった?」

「特にめぼしいものはなかった。ポーションやら武器やらが手に入ったぐらいかな……それにしても、かっこいい戦闘服だな」


シュライエットは、モノトーンの戦闘服を着ている。強さが優雅さと共にデザインで表現されていて、シュライエットにとても似合っていた。


「ふふ。旦那様もカッコいいよ」


そういってシュライエットは微笑んだ。


「ちょっとエルのところに行ってくる。返ってきたらすぐに出発するから、準備をしておいてくれ。……澄火」

「……ん」


澄火は俺の意図を察して、腕輪に戦闘服を含む装備一式を入れて俺に渡してくる。俺はそれを受け取り、エルの元へとワープした。

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