第12話 起床

目が覚めたら、この世の全ての知を凝縮したような輝きを持つ美しい瞳が、こちらをじっと覗き込んでいた。


「うわっ」

「ふふふ。おはようございます」


イタズラ成功!というような少し子供っぽい笑顔を作ると、エルヴィーラ王女……いや、エルはそう挨拶してくる。


「いつの間にこの部屋に?」


昨日は色々と話した後、エルヴィーラ王女と別れ、そしてローズさんに案内されてこの部屋で寝た。

なんでも、俺が部屋を抜け出た後に、何故か女子会が開催されていたらしい。

澄火が寝たのを確認し、気配を殺してこっそりと出てきたつもりだったが、どうやら起こしてしまったようだ。


澄火が起きただけで女子会にはならないと思うのだが……寂しくなった澄火がみんなを呼んだのだろうか?その辺りは謎である。


「つい先ほどですわ。昨日ののせいでしょうか、スヤスヤと気持ちよさそうに寝ておられましたよ」

「…………」


ちょっと恥ずかしい。


「本日は各々自由に過ごすように……とのことですわ。よければ、叡智の塔をご案内しようと思うのですが……いかがです?」


エルが配下と共に住まうこの島には塔が四つある。それぞれ時計回りに、「機械の塔」「収穫の塔」「守護の塔」「叡智の塔」だ。


「機械の塔」には、昨日乗ったヘリコプターを含め、様々な機械が収納されると共に、工場が内部に入っていて、レイヴァント王国が外貨を稼ぐために使われてもいる。

「収穫の塔」は農業、そして「守護の塔」はこの島の防衛システムを担う塔だ。


最後の「叡智の塔」だが、どうやらエルヴィーラ王女の研究拠点があるらしい。

もちろん部外者立ち入り禁止の場所だ。


「いいんですか?」

「ええ。翔の腕輪も調整する必要がありますので」

「では、お言葉に甘えまして」


俺は布団の中で腕輪を使って服を着替えて起き上がる。

エルはいつものドレスにティアラといった王女姿ではなく、シンプルなワンピースを着ている。

イヤリングや手袋もシンプルなものだが、かえってエルの生来の美しさを際立たせていた。


「こちらですわ」


そういうと、エルはそっと俺の手を引く。俺はエルの手を握り返して、エルについていった。

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