第4話 誓いの指輪

そんなこんな、色々な話をしつつ、俺たちはエルヴィーラ王女の住む島へと到着した。


相変わらず、オシャレなレンガの四つの塔が聳え立っている。


俺たちはヴァイオレットに導かれ、それぞれの部屋へと案内される。俺たちの部屋は、以前と同じ部屋だった。

当たり前のように、澄火と同じ部屋だ。


俺は腕輪から荷物を展開して、ベッドへ腰を下ろす。


「……ん」


と、澄火が横にちょこんと座る。


「……この前オークションで落札した瓶に入ってた液体を覚えてる?」

「ああ」


確か、ダンジョンアイテム合成うんぬんかんぬんとかいう怪しい海外の研究を参考にして、アイテム同士を合成させたんだっけか。


「……ん。実は、その指輪が完成した」


そういうと、澄火一つの指輪を手のひらに出現させる。


「……あれ?確か指輪って四つなかったっけ?」

「ん。実は、合成させた指輪は全部ダンジョンアイテム。うまい具合にその効果がかみ合って、一つの指輪になった」

「どんな効果があるんだ?」


澄火のことだから、鑑定の能力を持つ杉山さんあたりに頼んで、効果を詳らかにしてくれているだろう。


「……若くんは、ずっと私のそばにいると誓ってくれる?」


澄火は突然そんなことを言って、俺の目をじっと見つめてくる。

俺は瞬時に、半ば本能に従うようにして澄火に答える。


「ああ。関係の名前はともかく、俺はずっと澄火のそばにいると誓おう」

「……ん。私もずっと若くんのそばにいると誓う……“誓約成立”」


澄火がそう言うと、ふわりと指輪が浮かび上がる。そして、俺と澄火から凄まじい量のMPを徴収してきた。

俺はステータスセイバーに蓄えているMPも使い、澄火に負担が増えないように意図的にMPの放出量を増やす。


指輪は二つに増えると、双方の指輪に澄火のユニークスキルを象徴するような紫の宝石が生成される。


澄火は二つの指輪を手に取ると、俺の左手を取って薬指に指輪をはめてくる。


「……ん」


そして、澄火はもう一方の指輪を俺に渡し、左手を差し出してくる。


俺は求められていることを察して、澄火の左手の指にそっと指輪を嵌めた。


その瞬間、指輪の紫の宝石が光り輝くと、俺と澄火を柔らかな光でで包み込む。

その光は、俺たちの中の吸収されるようにして消えていった。


「……これがこの指輪の効果、か?」

「……ん」


澄火の姿がふっと掻き消える。

一瞬の後、俺の背中にむぎゅっと誰かが抱きついてきた。


気配でなんとなく把握する……までもなく、もちろん澄火だ。


「こんなふうに、MPを消費することで誓約を交わした相手の側にテレポートできる。あと、互いの位置がなんとなく把握できたり、誓約を交わした相手の危機が察知できたりする」


ふむ。

試してみるに、どうやら後者の方はオンとオフが切り替えられるようだ。自分の位置や危機をあえて隠したりすることもできるということだろう。


「あとは、MPの回復量が上がったり、防御力が上がったりする。他にも色々」

「……つまり、誓約を交わした相手と守り合うのに適した効果がいっぱいあるわけか」

「……ん。ただし、誓約は本人が心から守りたいと思うものでなければ成立しない」


心から守りたいもの……

俺は少し顔が熱くなる。


「ん、ちゃんと守ってね?破ったら何が起こるかわからないから」

「……何が起こるかわからない?」

「……ん。鑑定では何も表示されなかった」


それは怖い。

誓約を破ることなどありえないので、関係ないと言えば関係ないが。


と、澄火がすっと離れる。


「……ん。そろそろ海に行こ」

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