第2話 来栖家
「ちなみに、もし家から結婚相手が拒否されたり、結婚相手が見つからなかった場合は?」
「両親が話し合って、最終的には母親の決裁を経て結婚相手が確定するわ」
「なるほど」
そういえば、来栖家は代々母系なんだったか。決裁権が母親にあるというのも納得である。
「最も、家から拒否された場合は愛人や側室して囲ってしまうことが多いわね。あくまで結婚相手の選定は正室を選ぶためのものだから」
「…………なるほど」
なんとも反応しずらい話だ。
「っていうか、一夫多妻制なのか?」
「ええ。正確には、一夫多妻、ただし妻に愛人がいる場合もある、といったところかしら」
妻に愛人か……まだまだピュアな男子である俺には、嫌悪感すら感じられるシチュエーションだ。
「心配しなくても、私は愛人を作る気なんてないわよ。そもそも、愛人がいる場合というのは大抵、子供を産み終わって、かつ夫婦仲が冷え切って広い屋敷で会うことも無くなった女だけよ」
さらりと子供を産み終わってという条件が入っているのが、いかにも旧家と行った感じだ。
というか、一緒の家に暮らしていても会わないことができるくらいに屋敷が広いのか。
「……話は変わるけど、来栖美術館はどうなってるんだ?エメラルドを落札してたけど」
「あの宝石を落札したことによって、セキュリティの必要レベルが大きく上がったから、今美術館全体を作り直しているわ」
ものすごい金がかかりそうだ。
「もちろん、エルヴィーラに協力してもらってるわ。アーティファクトも交えたセキュリティシステムを構築して、万が一にも盗まれないようにしている途中ね」
「なるほど」
おそらくその話し合いも兼ねて、エルヴィーラの島を訪問するのだろう。
「あの宝石は、当分は常設展示の目玉にする予定よ。それから、美術館の最初の特別展は、ダンジョンから産出されたものを集めようと思っているわ」
「何かあったら協会を通して優先的に卸すよ」
「ええ、よろしく」
と、玲奈の体がふらりと傾く。慌てて支えると、少し弱目の力で俺をの腕を支えに体を起こした。
薄めのメイクでうまく隠されているが、目の下にうっすらと隈が見える。スケジュールの空きを作るために、無理矢理仕事を終わらせてきたのだろう。
俺はこの前ダンジョンで入手した最高級のポーションを一本腕輪から取り出して、瓶の蓋を開ける。
余談だが、ポーションは効果が強くなるほどドロップした時に入っている瓶の蓋がかたくなる。最高級ポーションともなると、ステータス能力が無ければ開けることすらままならない。
もちろん、ポーションの瓶も相応の耐久性を持っており、よほどのことがない限り壊すことができない。
また、何か保存するための技術が使われているらしく、中に入っているものの劣化を防ぐことができるのだ。そのため、実はポーションの瓶も結構な価値を持っていたりする。
しかし、そんな瓶をもってしても防げないほどにポーションは開封後の劣化が著しく速く、また保存するための技術など開発されていないため、瓶のまま流通させざるを得ない。
そのため、このような超高級ポーションは一般人にはほとんど出回らないのだ。
そんなポーションを、玲奈は受け取ってんくっんくっと飲む。
ただポーションを飲んでいるだけなのに、なんだか妙に色っぽい。
思わず見惚れていると、玲奈の反対に座る澄火からお叱りの袖クイが飛んできた。
俺は慌てて目線を逸らし、飲み終わった玲奈から瓶を受け取る。
「少し寝かせて頂戴」
玲奈はそういうと、ぽすりと俺の肩に頭を預け、すやすやと寝息を立て始めた。
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