第1話 結婚
「えっと……来栖さん」
「玲奈でいいわ。年下なんだし」
「……年下?」
俺はすぐ隣に座る玲奈をチラリと見る。
すでに大人……というより老成した雰囲気を醸し出している玲奈。
とても年下だとは思えない。
「そうは見えない?」
「……まあ、正直言えば」
敢えて玲奈の年下要素を見出すとするのならば、まだ成長途中だと思われるその体躯ぐらいか。
それにしたって、個人差の範疇に収まるくらいである。
「そ。でも私はまだ中学生よ」
「……会社経営とかって中学生でもできるのか?」
「民法第六条、一種又は数種の営業を許された未成年者は、その営業に関しては、成年者と同一の行為能力を有する……裏を返せば、未成年が法律上の“営業”をすることが想定されているということになるわね」
「へえ……」
ひょっとして、法律を全部暗記してたりするんだろうか?少なくとも、知識は中学生離れしているようである。
「それに、まだ結婚もしていないし」
「……結婚?」
なぜ14歳という話に、結婚が関わってくるのだろうか?日本の民法上、未成年者……つまり18歳未満であれば結婚の欠格事由に該当するはずだが。
「我が来栖家は代々、元服を15歳と定め、男子も女子も元服と同時に結婚するのがしきたりだから。……つまり、私が結婚するまで、後半年……と言ったところね」
「な、なるほど」
15歳で結婚……ちょっと俺には遠い世界だ。
結婚……今の俺の交友関係から考えると、俺の将来的な結婚相手は澄火といったところか?
今もほぼ一緒に寝て起きて、ほとんどの時間を一緒に過ごしている。
互いの命を預け合い、最早依存とも思えるほどに甘え合っている。
俺たちの関係は、おそらく“夫婦”という関係を遥かに超える深度を持っている。
ただ……もし澄火と結婚するとすれば恋愛感情ではなく、どちらかと言えば共依存的関係による結婚ということになるだろう。
あまりにも互いの距離が近いからか、澄火に対して恋愛感情は湧かない。
それにもし湧いたとして、この関係を一旦築き上げてしまった以上まともな恋愛はできないような気がする。
共依存的関係による結婚で幸せになれるとは思わないし……実際のところ、今のままだったら澄火と結婚することはないのかもしれない。
「ちなみに、結婚相手は?」
「まだ探し中ね」
なんだか自分で見つけるような言い草である。
結婚相手は家で決める……というのが旧家のしきたりというのが俺のイメージだが。
「来栖家は自分で結婚相手を選んでいいのよ。もちろん、血筋、学、経営力、金……なんでもいいから来栖家に貢献できる力がないと家から拒否されるわ」
来栖家に貢献できる力、か。
「今だったら、探索者であるというのもそれに入るかもね。……もっとも、来栖家の継嗣たる私の婿になるためには、最低でもSS級でないと拒否されるわね」
SS級……玲奈の結婚相手に立候補するかどうかはともかくとして、目指したい領域である。
ゆくゆくは俺の目の前にいる『天使』をも圧倒する力を手にしてSSS級にまでのしあがりたいが……先日までの手合わせから考える限り、まだまだ差は大きそうだ。
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