第四章 夏だ!海だ!
プロローグ
2日後。
俺たちはエルヴィーラ王女の住む島へと向かうべく、空港まで来ていた。
澄火に導かれるまま空港の中を進むと、見覚えのあるヘリコプターへと辿り着いた。
そばには、前と同じくヴァイオレットさんが佇んでいる。
「お待ちしておりました」
「……ん。もうみんな来てる?」
「いえ、1人時間ぴったりに到着する予定とのことです」
「……ん。了解」
ヴァイオレットさんはガシャリとドアを開く。
乗り込むと、中にはおとといまで稽古をつけてもらっていたリリア、そしてバク……いや、シュライエットがなぜかいた。
「ふふふ、おはようございます」
そう言って少しいたずらっぽく微笑むリリア。サプライズ成功!とでも言わんばかりだ。
今日もいつもの純白の服を着ている。羽は邪魔になるからか、収納しているようだ。
「おはようございます、リリア」
「師匠と呼んでくれても構いませんよ?」
「……おはようございます、師匠」
俺が言い直すと、リリアは嬉しそうに笑顔を作った。
「シュライエットも参加するのか?……っていうか、ここにいていいのか?」
「ん。上層部の許可はもらってある」
そう澄火は胸を張って言った。
「おはよう、旦那様。心配しなくても、許可は貰っているよ。ユニークスキルの使用を制限されているから、いざというときは守ってほしいな」
「……努力はするよ」
なぜか呼び名が旦那様になっているが、それをつつくのはやめておく。とんでもない蛇が出てきたら困る。
と、ガチャリとヘリコプターのドアが開く。
入ってきたのは、淡い紫の着物を着た少女……来栖玲奈さんだった。
「来栖玲奈よ。よろしく」
そう自己紹介すると、来栖さんは機内へと颯爽と入ってくる。
そう言えば、来栖さんはエルヴィーラ王女の友人なんだったか。
来栖財閥の令嬢であり、すでに会社や財閥の大きなプロジェクトをいくつも取りまとめていてかなり忙しいと思うが、よくスケジュールを調整できたものだ。
来栖令嬢は荷物を澄火に預けると、俺の隣に腰を下ろした。
これで席順は、ヘリの右側に、前方からリリア、シュライエット、ヴァイオレット。そして左側に、前方から澄火、俺、来栖さん……という形になった。
「……ん、出発しても大丈夫」
どうやらこれでメンバーは全員揃ったらしい、澄火はそうヴァイオレットに合図を送る。
「かしこまりました。では、離陸いたします」
微かに体が浮かび上がるような感覚がする。外を見ると、上から下へと景色がながれていく。
エルヴィーラ王女によって作られたらしいこのヘリコプターは、機内に騒音はおろか振動もほとんど伝わって来ない。
いざ、エルヴィーラ王女の島へ……出発である。
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