第10話 聖痕
鎖とビームをひたすら避け、剣を刀で迎撃する。
ただ迎撃するのでは、いくらスピードを威力に乗せようとステータスの差もあって力負けしてしまう。そのことに気づいてからは、刀の曲線を利用して受け流すように捌けるようになった。
「防御するだけでは、いつまで経っても届きませんよ?」
そんなことは分かっている。
『天使』の攻撃に隙を生み出すことなど不可能だ。こちらから能動的に崩さなければならない。
––––ここだ!
俺は『天使』が攻撃をするタイミングでそれまで受け流していた攻撃を大きく弾く。
そしてできた大きな隙を見逃さず、
「甘いですよ?」
しかし、『天使』はそれすらも翼をはためかせて回避した。
そしてまた、終わりのない攻撃が始まる。
また、回避されてしまった。
後少し。
後少し何かがあれば、届きそうなのだが。
そして、その「後少し」は、もう俺の中にあるという確信が俺にはあった。
目の前にあるのに、決して俺には届かない場所にある……そんなある種矛盾した感覚が、ここ一日ほど俺を苛んでいる。
ニャルトラ・ステップによる空中移動は、どうしても直線的になりがちで、しかも足が起点になっている以上対応されづらい。
そう、『天使』のように、翼がありさえすれば。
もっと自由自在な機動があれば……
俺はアム・レアーを撃ち込んで牽制しつつ、自身の中にあるものへと意識を向ける。
––––何かはわからないが……俺の中にある力なら、俺に従え!
そんな呼びかけに応えたのか、あるいは同情したのか……不意に、俺の中にあるものがエネルギーを求めてくる。
それに応え、MPを込めた瞬間、俺の体が前へとぐんと一気に加速する。
「ふふふ」
『天使』は嬉しそうに微笑むと、俺でも捉えるのが難しいほどのスピードで動き、剣撃を叩き込んでくる。
俺は加速を活かしてそれをかわし、なんとか一撃を入れよう……としたところで、すんでのところで回避される。
「……今のは?」
「ふふふ。私の
「
いつの間にそんなものを……と言いかけて、俺は額にキスをされた時のことを思い出した。
もしかしてあの時に、刻まれたのか。ひょっとしたら今鏡を見たら、何か紋章のようなものがついているのかもしれない。
おそらく
今使ったのは、リリアの飛行能力のように、MPで仮想の翼を生み出して加速する技と言ったところか。
尤も、リリアのそれとは原理も効果も違うようだが。
「熟練すれば、自由自在に使えるようになり、そしてエネルギーの消費も少なくなりますよ」
なぜこの力を俺に……などと聞くのは、野暮というものだろう。
「……ありがたく使わせてもらいます」
「ふふ。行きますよ?」
そういうと、リリアは鎖を周囲に展開する。
この翼があれば、かなり空中機動の選択肢が増える。
先ほどの攻撃は、俺がうまく自身の速度に対応できなかったため躱されたが、しかし今までで最も惜しかった。
きちんと運用すれば、攻撃が届くだろう。
俺は刀を構え、宙を蹴った。
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