第11話 戦闘服
「若くん、お帰り」
そういうと澄火は微笑む。
一週間半後。
ようやく『天使』に一撃を入れることができた俺は、“StarElements”へと帰ってきた。
文字通り不眠不休で戦ったので、結構疲れが残っている。
「……ん。ご飯にする?お風呂にする?それとも戦闘服にする?」
「……戦闘服?」
何やらテンプレじみたセリフを澄火が言うが、そんなことより最後の「戦闘服」というワードが俺は気になった。
「じゃーん」
そんな効果音と共に澄火が腕輪から出現させたのは、二着の戦闘服だった。
サイズ感と腰についている装備スロットから考えて、一着が俺の、もう一着が澄火のと言ったところだろう。
「ん。早速着てみる」
「……今か?」
「ん。これを着た若くん、見てみたい」
目をキラキラさせながらそう強く要請されては、断ることはできない。
俺は澄火から戦闘服を受け取り、早速着ようとして……あることに気づいた。
「……この服、ファスナーとかボタンとかなくないか?どうやって着るんだこれ?」
「……ん。この服は、腕輪があることを前提にデザインしてある。だから、普通に着ることはできない」
「あ、ひょっとして」
「ん。こうやって着る」
そういうと澄火は自分の戦闘服を腕輪に収納し、今着ているエプロンなどの服を消して戦闘服をその身に纏う。
ただし、その一瞬でも、ステータスによって強化され、ここ三週間半ほどの訓練によって鍛え抜かれた俺の目にはバッチリ下着姿が写ってしまった。
まあ、下着は俺が選んで買ってきたものだし、お風呂に一緒に入った時に裸も目撃してしまったことがあるので、今更ドキリとなんてしていないが。
話を戦闘服に戻そう。
戦闘服はベースカラーが黒で、赤、青、そして紫のラインが入っている。
色のラインは、明度や彩度、色相の色の三要素が絶妙に調整されて、かなりセンスの良さを感じる仕上がりとなっている。
結構体にピッタリと張り付くデザインで、ボディラインがくっきり出てしまうという難点はあるものの、着心地はかなり良さそうである。
右胸には小さく“Colors”のロゴ(戦闘服がデザインされる過程で作成されたものだろう)、そして左腕には『紫電』の二つ名が刻まれている。
「……ん、もういい?」
まじまじと戦闘服を観察する俺に、少し頬を紅に染めた澄火がそういった。
「ああ、うん。……似合ってるな。かっこいいよ、澄火」
「……ん、ありがと。若くんも着てみて」
「ああ」
俺は今来ているジーンズとTシャツを消して、戦闘服を身に纏う。
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