第2話 組み手
前、後、右、上、左、右斜め後方……
全方位から繰り出される鎖の攻撃を、俺は最小限の動きでかわしていく。
無駄に大きく避けようとすると、被弾リスクが高まってしまうことを身をもって実感していた。
「……ぐは!」
調子良く避けられていたが、鎖を喰らってしまった。ステータスに差があるからか、結構痛い。
今俺が何をやっているのかというと、「直感を鍛える」訓練である。
方法は、リリアがランダムに繰り出すように設定した鎖の攻撃を避け続ける……という、なんともスパルタ式の方法である。
俺は、一旦攻撃が止んだ隙に即座に立ち上がり、再び鎖の攻撃を避け始める。
かれこれ数時間は続けているような気がするが、まだどうしても目に頼る癖が抜けない。
俺は考えを変えて、目を閉じて、さらに目隠しをする。
視覚に頼る癖があるのならば、しかくを遮断してしまえばいい。
そしてその数十分後。不意に鎖の攻撃が止み、鎖のドームを割ってリリアが入ってきた。
「……被弾回数が増えたので心配になって来てみましたが……なるほど、目隠しをつけてやったのですか」
「ええ、まあ」
被弾の回数が一気に増え、身体中に被弾を喰らってしまった。正直、かなり辛い。立ってるのも少し苦しいくらいだ。
「ふむ……ひとまず、直感を鍛える訓練はここまでということにしましょう。ここからは……実戦です」
そういうと、天使はパチリと指を鳴らすと鎖のドームを消失させ、そしてオーラを纏わせた真っ白な剣を構えた。
「3次元を使った戦闘の仕方をお教えしましょう……行きますよ?」
俺は直感に従って上に跳び、抜き放った二刀を下に向かって振り抜く。
金属が打ち合わされる甲高い音が響き、俺は上に弾き飛ばされた。
「これを防ぐとは……ふふ。やりますね」
神秘的な美しさを感じさせる顔でそう微笑むリリア。俺は少しドキリとしてしまったが、今はそんな場合ではない。
「……はあっ」
俺は宙を二度蹴って天使と同じ高度まで行き、突きを撃つ。
「甘いですよ」
天使はひらりと縦と横にそれぞれ半回転してそれを避けると、無造作にリリアから見て下から上……俺から見れば上から下の斬撃を放ってくる。
「ぐはっ」
じゃばあん。
リリアが剣に纏わせているオーラは斬撃を非殺傷のものにするものであるらしく、俺はめちゃくちゃ痛い思いをして海に叩きつけられるだけで済んだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます