第1話 直感
『天使』は虚空から大量の鎖を召喚し、ギチッと俺たちを囲むような球を形作る。
「……まず、我々探索者と普通の人間では、大きく戦闘に対するスタンスが違います。それはなんだと思いますか?」
スタンスの違い……違いと言えば、ステータス能力の有無か。
とすると……
「……絶対的なパワーとスピード?」
「違います。スタンスの違いですよ?」
ああ、そうか。
つまり、戦闘に対する捉え方の違いを聞いているわけか。
一般人の戦闘方法は、剣道や柔道、あるいは空手(対人使用が禁止されている武術だったような気もする)なんかの武術を使う戦闘が主だ。
それらの武術は全て、普通の人間––––鍛え上げたとしても、探索者から見ればほとんど誤差––––のパワーとスピードを前提として設計されている。
では探索者は?
探索者はパワーとスピードが桁違いな上に、スキルという特殊能力を持っている。スキルを特段持っていなかったとしても、アイテムによって戦術の幅を大きく広げていることが多い……俺のように。
この分析を総合すると……
「戦闘に使える選択肢が一般人に比べて多いから……スタイルが武術全般と全く当てはまらない?」
「……まあ、及第点をあげましょう。実際には、武術も有効ですよ。私の剣技も、一般人の武術を参考にして設計したものですし」
「……なるほど」
「ただ……そうですね。あなたや私のように、空中を高機動で動きながら戦うような武術は人類史上存在しませんから、やはり自分なりの武術……のようなものは、開発して身につける必要があるでしょう。もちろん、私も手伝いますよ」
「ありがとうございます」
「私が言いたかったのは、全く別のことです」
不意に俺は背中に悪寒が走り、背後へ跳んだ。一瞬ののち、俺のいた空間を鎖が貫く。そして、俺は背後から来ていたもう一本の鎖にぶっ飛ばされた。
「……あの、一体何を?」
「今、あなたは見えていないはずの鎖を躱わしましたね?」
「……そう言えばそうですね」
本能に従っただけだ。
「ステータス能力で強化されるのは––––もちろんパワーやスピードもそうですが––––実は、直感……あるいは勘や本能と言い換えてもいいでしょう。そういったものも強化されるのです」
それは初めて知った。
そう言えば最近、直感に従って攻撃を回避したり、あるいは防御したりすることが多かった気がする。
「今からそれを自覚し、鍛える訓練をします。少し辛いですが……頑張ってくださいね?」
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