第三章 訓練

プロローグ

訓練の集合場所である日本ダンジョン探索者協会の本部へ向かうと、すでに序列第一位……いや、SSS級探索者『天使』が待っていた。


「お待たせしました」

「遅刻ではありませんから、問題はありませんよ……相棒の方は?」

「澄火は、俺が訓練している時は1人で行動するらしいです。試したいことがあるんだとか」


澄火の実力なら、1人でダンジョンに潜ったとしても特に問題はないだろう。


「そうですか。でじゃ、早速向かうとしましょう……『天翔』なのですから、空は飛べますよね?」

「ええ」


正確には、「飛べる」というより「跳べる」だが。


「……では問題ありませんね。いざとなれば、ご自分で地上に戻ってください。では、行くとしましょう」

「……どこへ?」

「お楽しみです」


そういうと、『天使』リリアは部屋を出てエレベーターへと向かう。

ついてこいということだと解釈した俺は、天使を追った。


エレベーターに乗ると、天使はポチリと屋上のボタンを押す。


「……ひょっとして、屋上から飛ぶつもりですか?」

「ええ。……別に敬語を使う必要はありませんよ。同世代なんですし」

「そうです……そうか。……そんなことしていいのか?」

「ええ。私は許可されています。一瞬で人の視界から消えるほどのスピードで動くことを条件として、ですが」


そんなに難しい条件ではない。


「では、行きましょうか」


エレベーターが屋上へと到達した。

リリアはヘリポート(なんだかやけに頑丈に作られているような気がする)の中心に行くと、俺を手招きする。


リリアに近づくと、ぐいっと抱えられる。


「行きますよ」


耳元でリリアが囁いた直後、バサリと音がして視界が一気に持ち上がった。


「……すごいですね」


実のところ、『天翔』の二つ名を持っておきながら、空で戦闘したことはあっても飛んだ経験はない。


疾走感といい、風を切る感覚といい、景色といい……なんとも素晴らしい感覚だ。


「では、移動時間を利用して作戦会議といきましょうか。今、どんなスタイルで戦闘をしていますか?」

「……俺のユニークスキルは「能力奪取」というもので……倒した敵からステータスを奪い取れます。一方で、スキルは得られないので……大体、ステータスによってゴリ押すことが多いですね」

「ふむ……使っている武器は?」

「この二つの刀と……アム・レアーという遠隔攻撃武器、それからニャルトラ・ステップという靴による蹴り攻撃を使うことが多いです」

「……あの、堕天を攻撃する時に使った武器は?」

「あれは条件が整った時にしか使えないです」

「ふむ……ひとまずはプラン通りで良さそうですね。刀を使った戦闘については門外漢なので、その基礎は別の人にやってもらうことにしまう。……ひとまず、この辺りにしましょう」


そういうと、天使は海の水面近くまで行くと、俺から手を離した。俺はニャルトラ・ステップを使って空中に留まる。


「では、始めましょうか」

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